人間と魔物。
人間には魔力がない。
鋭い牙や爪もなければ、空を飛べる翼や身を守る固い鱗を持つものもいない。
それでも長い間ずっと、人間と魔物は共存してきた。
身体的能力の差や魔力の有無を、人間はその知恵と発明とで埋め、発展してきた。
人間と魔物との小さな諍いはどうにも絶えることがなく、時にはその争いが激化し、大規模な戦となることもある。
しかしそんな時には、ふと神子が現れるのだ。
人間でありながら万物から愛される神子は、平和をもたらし、崩れた均衡をただす。
そしてまた時は進み、歴史は繰り返されてゆく。
朗らかに明るく、優しく慈愛に満ちている。
自ら光り輝いてるかのような黄金の髪と目。
神々しいながらも親しみやすい。
まさに神子であり、我ら人間の天使であるのだ。
王様もすっかり骨抜きであるし、民も神子を愛している。
お美しい神子さま。
「今日は王様は忙しいのかなあ?」
「お忙しくとも来てくださいますよ。」
不安になどならなくてよいのです。
彼はあなたを愛している。
朗らかに笑う愛らしい神子さま。
あなたが心を許してくださるおかげで、王様にはたまに邪険にされてしまいます。
しかし、それでも幸せなのです。
並べられた大勢の中から、「君がいいな」と神子さま自ら私をお世話係に指名してくださったこと。
それがどれだけ光栄で喜ばしかったか。
どれだけ今の私を支えているのか。
あなたにお仕えできて、私は、心から幸せであるのです。