理央×京 甘


窓の外は強い雨、残念ながら花園へは行けそうにない。

ということで、理央の好きなクッキーを作ることにした。

「、ちょこ。」
「いいねぇ、アイスボックスクッキーが楽しそうじゃない?」

理央に抱え込まれるように座りながらレシピ本を眺める。
熱心に考え込む理央は可愛いし、ゆったりとした時間に癒される。

「…いっぱい、」
「うん。いっぱい作ればいいねぇ。」

にこりと振り返り笑えば、満足げに目を細めるその顔に胸がはねる。
まったくもう、本当に綺麗に笑うんだから。


二人で並んで片付いたキッチンに立つ。
自慢じゃないが、俺は大抵のことはそつなくこなせる。料理も含めて。
しかし理央はどうだろうか。

すこし不安になって見上げれば、眉を下げた表情があった。
どうやら、料理の経験は少ないみたいだねぇ。
このキッチンがこんなに綺麗なのも、使ってないんだろうなあ。

「大丈夫、包丁は使わないからね。」

そんな難しいことはしないし、生地を切るくらい俺だけでやればいいしね。
こくりと真剣な表情でうなづく理央に、その茶色のふわふわ頭をなでたくなった。

ちょっとこの身長差は悔しいねぇ。



ふたりの時間は和やかに過ぎていく。
心が穏やかで、いつもの仮面も気遣いも妄想もどこへやら。
すっかり腑抜けた俺がいる。

だけれどそれが心地いい、なんて。
こういうのが幸せなのかしら、なんて思ってしまう。


おいしいクッキーが焼けたら、紅茶をいれて、おやつにしよう。
それが終わったら、お昼寝。
もちろんおはようとおやすみのキスも。


ゆったりと過ぎていく休日。
やっぱりこれが、幸せなのかもしれない。


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