不良×平凡 甘々



「ね、ねぇ、竜くん」

おずおずと声をかけると、すぐ後ろから「あ゛?」と促す竜くんの声が聞こえた。
いまだにその怖さに慣れない僕が思わず肩を揺らすと、次いで優しく頭を撫でてくれる。

優しいなあ、見た目はあんなに怖いのに。
ピアスがたくさんで、真っ赤な髪がツンツンしてて、目つきは睨んでるみたいで、低い声はいつでも凄んでるみたい。

だけど、竜くんは口数は少ないけど、すごく優しい。
口ごもる僕を怒鳴らずに待ってくれるし、一緒に歩く時も荷物を持ったり歩調を合わせてくれたりする。

それに何より、目が優しいんだ。
優しくて甘くてとろけそうな目で、ゆったりと僕を見てくれる。


穏やかに僕の頭をなでる手に押され、僕は先の言葉の続きを口に出す。

「あの、この体制、恥ずかしいんだけど…」
「……。」

後ろから僕を抱えるように座っている竜くん。
密着した背中や話す度に耳をくすぐったく触れる息、いやそれ以上に人目が恥ずかしい。

だってここ、竜くんが総長をつとめるチームの溜まり場なんだよ。
それに不良の皆さんが怖い。だって僕は平凡だし、男だし。

そう訴えると、頭を撫でていた手が止まり、彼はぽつりとこぼした。

「…離したくねぇんだよ」

その言葉に赤面した僕を、竜くんはくるりと反転させる。
すると完璧に抱きしめられる格好になって、僕は更にあわあわと顔を赤らめた。


そんな僕は、知らない。

きつく抱きしめた竜くんが周りを威嚇するように睨んで、周りの不良さんは応援の眼差しでそっと席を外したことを。


大好きな竜くんに抱きしめられて、幸せに窒息死しそうな僕は、知らない。


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