へたれ攻め


突然だけど、ムードって大切だよな。
何をするにも、それ相応の雰囲気がなきゃだめだと思う。

俗に言えば、空気読めってこと。

そんなこんなで、ためらったりしてる今日この頃。


いい加減、キスしたいです。



「ルイ、帰ろ」
「ん。」

今日も変わらず可愛い俺の恋人が、こくりと頷いてくれる。

なんとまさかの男で、しかも周りには無関心な奴だ。
告白した時は、玉砕する気しかなかったから、今のこの恋人生活は夢みたいだ。

だけどまぁ、告白したのも俺なら、メールを送るのも教室に遊びに行くのも帰りを呼びに行くのも、ことごとく俺だ。

一方通行気味だけど、だけど、それでも、俺はこいつがすごく好きだ。

恥ずかしいし、なんかそんな軽く言ったらいけない気がするから、あんまり口には出せないけどさ。

「・・・あ、そういえばルイの好きな監督の新作映画って明後日から公開だよな」

今思い出したかのように自然に口に出すけど、実は一昨日から言おうと試みてたことだったり。

ルイの好きなことに関しては、いつもアンテナを張り巡らせてリサーチしてる。
少しでも近づきたいし、会話に使えるし。

「うん、見たい」

わずかに口元をゆるめた姿に、心の中で口元を押さえた。
だって、男だけど可愛すぎるっしょ。

「じゃあさ、あの、一緒に見に行かない?」

きょとんとこちらを見てくるルイが可愛くて可愛くて仕方ない。
自然体を装ってはいても、ちょっと気恥ずかしくて目が合わせられない。

「…うん、行く」

しばしの沈黙の後に、ルイは明るく笑った。
それはとても綺麗で幸せな笑顔で、どうしようもなく、何かが胸にこみ上げる。


ああ、これだ。
これだから、ルイは俺を魅了してやまない。

性別や常識なんか超える、明らかで激しい熱情。


「じゃあさ、昼ご飯とかも一緒に食べよう」

嬉しくて緩んだ頬で問えば、夕日にあかく映るルイは頷いた。


どうしようもなく胸が高鳴る。

どんなプランを立てようか、どんな服を着ようか、2人で何を食べようか。

大切な彼とのデート、わくわくしないほうがおかしい。



よし、頑張れ俺。

愛しの彼を楽しませ、かつキスしてみせるんだ。


頑張ってみせるとも。

ああ、今夜も眠れない。





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