104期の(数少ない)出番

※エレンの勘違い編。時間軸あやふやでご覧下さい。


 急ぎ向かった先で、ミカサに背をさすられながらエレンは先程見た衝撃の光景を二人に告げた。ナマエさんそっくりの女の子が兵長のお腹の上ですやすや寝ていた、歳は3、4歳くらいの子だった、その子を守るように兵長が腕で支えていた。ナマエさんいつ産んだんだろ!?と混乱しながらアルミンに掴みかかったが、落ち着きなよエレン!と肩をぽんぽんされてなだめられた。

「そもそもナマエさんは妊娠しているふうじゃなかっただろ?」
「いや、そうだけどよ……じゃあ兵長の上で寝てた女の子何?」
「それは分からないけど……」
「やっぱりナマエさんが産んだとしか思えねえ」
「ええー?4年前とかお腹膨らんでなかったよ」
「仕事も、普通にしていた」
「だよねえミカサ」
「ま、まさか兵長、ナマエさん以外との子どもを……!?」
「そ、それは修羅場すぎるね……でもその子ナマエさんそっくりなんでしょ?」
「ナマエさんを幼くしたらあんな感じかなって」
「どうしたどうしたー?」

 エレンは背をさすられ続けながらアルミンを引っ張ってしゃがむ。ミカサはエレンに続いて横に座ったので引っ張らなかったが、すっと手を出してきたのでにぎにぎしておいた。三人して小声でコソコソ喋っていても結論は出ない。これは新たな頭脳を投入すべきか……とアルミンが考えていたところでガサガサ音をたてながら巨人を愛しすぎている変人が合流した。ハンジである。
 三人が、ばっと振り返るとハンジが両手に抱えきれないほどの袋を携えていた。そりゃあ音も大きくなりますよねと言うほど抱えていたので、エレンが急いで駆け寄り袋をいくつも引き受けた。ミカサとアルミンも、エレンから袋を一つずつ受け取る。

「いやーごめんね君たち。調子に乗って買いすぎちゃって」
「いえ……何を買われたんですか?」
「ちっちゃい女の子の、服とか……あとは下着とか!」
「どわあっ!何買ってるんですかハンジさん!!」
「あ、ミカサの袋がそうだよ」
「……本当だ」
「覗くなよミカサァ!」

 動揺して袋を落としそうになった男子二人に対して、かさりと開けて中身をみとめたミカサは性別が女と言うこともあってか平然としていた。顔を逸らすが、手をかざして見ないようにしたのだが、エレンはしましまぱんつがちらっと見えてしまった。耳を真っ赤にして俯いてしまっているのはアルミンである。
 なんでこんなものを……と問うてみても、上官であるハンジははっはっはと笑って歩みを始めてしまった。急いで三人は着いていくが、上官の執務室が並んでいる区画に進んでいることが分かると、特にエレンは先程の光景を思い出さずにはいられなかった。
 
 そうだ、ハンジさんなら兵長ともナマエさんとも仲がいいし何か知っているかも。

「あのっ……」
「すみませんゾエ分隊長!急ぎの用事だと団長がお呼びしております!」
「うえー?分かったすぐ行くよ。ごめんエレン!この袋も一緒にリヴァイのとこ持って行ってくれる?」
「あ、は、はい」
「お願いねー」
「エレン、私が持つ」
「……あんがとミカサ……」

 聞きたかったことを聞く前に……っ!ずしゃあと床に這いつくばりたかったがとりあえずミカサに一つ袋を預けて、エレンが二袋、ミカサが二袋、アルミンが一袋の計五袋を、兵長のもとへと運ぼうと廊下を進む。
 歩きだしてすぐ、前方でドアが開いた。「失礼いたしました」と礼をしながら誰かの部屋から三人が出てくる。ジャンに、クリスタに、ライナーだった。この三人が一緒なんて珍しい。そう思いながらアルミンは声をかける。

「あん?お前ら何持ってんだ?」
「ミカサにエレン、それにアルミンも!こんにちは!」
「(クリスタマジ天使結婚しよ)」

 自分が持っていた一袋をジャンに押し付けるとエレンは、ミカサから下着が入っていない方の袋を受け取ってそれをライナーに持ってもらった。私も持つよ、とクリスタは申し出たが袋は五袋のみなので、ライナーが丁重に断った。男に任せておけよ、と。
 その時のミカサの顔が怖かったと、アルミンはのちにベルトルトやジャンに話した。

「あ、」

 先頭を歩くエレンの声に、みなが彼の方を向いた。エレンの視線はまっすぐ廊下の先へと向けられていて、そこにはぷるぷる背伸びしながらドアに手をかけようとしている幼女がいた。その部屋はリヴァイ兵長の――!と誰もが戦慄したが、ドアノブから手を放してため息をついた幼女の横顔をよく見るとナマエの容姿に酷似している。全員が声も出さず立ちすくんでびっくりしていると、幼女がこちらを向いた。やはりナマエそっくりだったのだ。



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