体育委員会もふもふ祭り
 リクエスト「小平太以外も獣化して主人公に群がっている話が読みたいです!後々やってきた狼小平太が、そのニオイに不機嫌になってマーキングしているのを想像するとすっごく可愛いです。」より。
 迷ったのでもう一つ書きます\(^o^)/
 こちらのお話は体育委員会全員が、狼になれるというIF設定です。



 
 忍たま六年生は本日課外実習と言うことで、小平太さんには薬草摘みへ着いて来てもらうことは叶いません。「一人はダメだ!危ないだろ!」と怒られてしましましたが必要性の高い薬草ばかりを摘みに行かなければならないので、薬草を見つけるのが上手いと言われている私が行くのが一番良い手立てであります。なにより不運と名高い忍たま保健委員が行くよりは私が行った方が……と切にお願いをしたところ、体育委員会と一緒であれば、という結論に至りました。このことを伊作君に伝えると、じゃあついでに……と体育委員会人数分の籠を渡されました。ちゃっかりしてる。



「ということで、よろしくお願いします」
「わああなまえ先輩だー!金吾、なまえ先輩だよー!」
「先輩!抱きついてもいいですかー!」
「はいなまえ先輩!私にかかれば薬草なんてちょちょいのちょいで見つかりますとも!ええ、すぐに。それはもうすぐに!珍しい薬草もそうでない薬草もなまえ先輩のお目に入れて見せましょう!」
「滝夜叉丸うるさいっす」
「先輩をつけろ!滝夜叉丸先輩、あるいは平先輩とな!!」
「へいへい滝夜叉丸先輩っと」
「三之助えええ」
「なまえ先輩こんにちは。籠貸して下さい」
「あ、はい。これだよ」

 左右にシロちゃんと金吾をくっつけているため歩けません。三之助君を手招いて傍らの籠を指しますと、重なっていた籠を一つひとつ外しては体育委員全員に渡してくれました。シロちゃんと金吾は籠を渡されるとよっこらしょとそれを背負いましたが、籠に背負われている感が否めません。うわあああ、とってもかわいい。

「さあなまえ先輩。参りましょうか」
「うん。今日はね、裏裏山まででいいの。じゃあ……そこまでマラソンしましょうか」
「七松先輩みたいなことを仰るんですね……」
「頼まれちゃったから」



マラソンは、私を先頭にして木々の間を走りました。続いてシロちゃん、金吾、三之助君、滝ちゃんです。目的の薬草の近くに群生しやすいと言われるお花の匂いを頼りに、えっちらおっちら走り続けましたが、辿りついてみれば開けた場所でございました。切り立った崖などでしたらみんなには待っていてもらおうと思っておりましたが、怪我の危険が少なそうなので一緒に摘んでいこうと思います。籠を下ろし、くるっと振り返りましてみんなに声をかけようと思ったのですが、振り返った先には紫、萌黄、青、水色ではなくもふもふの毛玉でした。お、狼さんが勢ぞろい……!
 四匹の狼さんは、お花に向かって突っ込んでゆきました。薬草の近くに生えているお花に鼻をこすりつけ、お腹を出してごろんと転がり、恍惚状態の狼さん達。もしかしてこのお花は狼さんにとって、猫で言うマタタビのようなものだったのでしょうか。

「た、滝ちゃん、三之助君、シロちゃん、金吾……」

 おろおろしながらみんなの名前を呼びますと、大きな狼さん二人はお花に夢中ですが、ちいちゃな狼さん二人が私のもとへと飛び込んでまいりました。飛び込まれるのは小平太さんで慣れていたので、倒れるということにはなりませんでしたが少しばかり押されてしまいました。とんとん、と足踏みをしたのですが依然としてちっちゃい狼さん達は、ぐいぐいと鼻を押しつけてらっしゃいます。腰にスリスリと擦り寄っているこのお二人、数回スリスリする度に顔を上げては、おめめをくりくりさせて私を見つめてくるのです。この、動きは!

「撫でて……欲しいの?」
「くぅん」
「わん!」

 この動きは小平太さんがよくやるアレです。撫でてほしい時の動きです。おそるおそる聞いてみるとその通りだったようで、手をお二人の頭に置いてみると満足そうに息を吐きました。うりうり頭を撫でまわしてあげると、お座りをし、尻尾をぶんぶんと振りまして嬉しそうにしております。えへへ、かわいいなあ。
 ほのぼのとしていたのはここまでです。滝ちゃんも三之助君も突っ込んできましたので、先程は踏ん張れましたがさすがに倒れこみました。様々な草花の中に飛び込んだのですが、倒れ込んだ私の上へ次から次へと狼さん達が重なってゆきました。重たさに思わずつぶれたカエルのような声が出てしまいましたが、狼さん達はきゃっきゃとはしゃいでいるようで気が済むまで遊ばせてあげようと思いました。
 先程下ろした籠はそういえばどこに?唯一自由に首だけは動くのであたりに目をやると、ころころと五つの籠がそこらじゅうに点在しておりました。

「……!」

 開けた野に、突然濃い色が飛び込みました。

 思わず狼さん達を押しのけ、懐の苦無を握りましたが、濃い色の正体は見なれた緑色で、小平太さんでしたのでほっと息を吐いて、苦無から手を離しました。
 押しのけた時にびっくりしたのでしょう、狼さん達はヒト型に戻っていて、中でも滝ちゃんは恥ずかしそうに髪の毛をいじっておりました。

「なまえ!帰ったぞ!」
「おかえりなさい。他のみなさんは?」
「学園に帰っているはずだぞ。私だけこちらに来たんだ」
「まあそうでしたか。実習は楽しかったですか」
「とっても!……ん?」

 たたーっとこちらに駆け寄った小平太さんからは、彼自身の血の匂いも、薬草の匂いも毒の匂いもしませんので、おそらく無傷で本日の実習をこなされたのだと思います。もちろん後で脱いでもらってしっかりと傷をチェックしますが、今の時点では急ぐような傷はなさそうだ、と判断いたしました。
 お話をしていると、急に小平太さんが怪訝そうな顔を致しました。いかがなさいました?とお声かけをしましても、小平太さんは鼻をひくひくと動かすばかりです。何かの匂いを嗅ぎながら、小平太さんの顔が徐々に近づいてまいりました。
 首筋、耳の裏、首筋、鎖骨あたり、胸……とすんすん鼻を動かしながら移動してゆきます。その隙に、滝ちゃんは後輩全員を連れ、「籠を拾ってきます!」と私たちから離れておりました。

 私の手を取り、ご自身の顔の近くまで持ちあげると、小平太さんは匂いを嗅ぎ、次いでべろりと舐めあげました。悲鳴を上げる間もなく、もう片方の手も持ち上げられべろりと舐められてしまいます。くすぐったいやらはずかしいやらでわたわたしている私ですが、手を離した小平太さんの次の行動は、前からぎゅっと抱きしめる、というものでした。

「あ、ああああの……!?」
「んー……」
「こ、小平太さん……!」

 隙間なくきつく抱きしめられましたが、腰に回された小平太さんの手がより強く力をこめていらっしゃいますので、なんというか意識をしてしまって、私の顔は今、絶対赤いはずです。

「なまえ急にごめんな。でも他の匂いするのヤだからもうちょっとな」


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