狼姿の利用法
 リクエスト「もふもふ可愛い!六年生視点で二人を見たいです。」より留三郎視点。
 小平太と主人公六年生時。小平太=狼っていうことを主人公は知っております。
 IF話としてお楽しみください!




 
 用具委員会はさまざまなものの修理・改修を請け負っている。学園から依頼されるものもあれば、学年から、学級から、委員会から、などと依頼主は様々だ。また、個人からの依頼は用具委員各自へ通されるようになっている。各自が責任を持って仕事を全うできるよう、個人から修理改修の話が来たら用具委員会を通して依頼人と用具委員、一対一で仕事の話をするように指導されているのだ。先輩の中には、その制度を利用していちゃついたとかいちゃついていないとか。
 べ、別にくのたまとか?女体がどうとかそんなこと?

 興味あるわ!!!!!!!

 激しく興味がある。興味がないわけがない。同室の伊作が委員会ゆえにか人体の構造に妙に詳しく、解剖学的に解説してくれるのだが生々しくていかん。俺が聞きたいのはそういうのではなくてだな、春画のようなファンタジックでエロティックな……。
 話が逸れた。そう、先輩の中にはこの制度を利用した人がいるらしい。意中のくのたまから用具委員会へ依頼が来た時である。この依頼は自分に流してくれと主張をし、納品の際にアピールをし。忍たま、くのたまの薄いつながりをこういったところで強めていく魂胆らしい。当時一年生だった俺にはよく分からなかったが六年となった今ならよく分かる。先輩天才だろ。委員会を通して自然な接点を作ってしまうとか先輩天才だろ!

 しかし特に意中のくのたまが居るわけでもなかったので、下心をもってこの制度を利用したことは未だにない。異性の体に興味はあるが、恋愛感情はよく分からない。小平太がくのたまのみょうじなまえに入れ込んでいるのは知っているが、あそこまでの激情を持てるものなのか。少なくとも俺は無理だ。出来ません。いや、待てよ。俺の後輩に対する気持ちと変わらないんじゃないか。そういうことか?

 みょうじなまえと言えばこのたび用具委員会へ修理を依頼してきたくのたまである。なにやら薬草を煎じる時に使う小さな片手鍋の補修、とのことだったのだ。自分でも出来なくはないけど、やっぱり用具委員会に頼んだ方が質が良いから。留くんよろしくね。とにこやかに言われた時はちょっときゅんとした。俺を……頼って来ている……!という優越感。この感情を小平太に知られたらぶっころころされるんだろうな。ああ恐ろしい。
 あのほやんほやんした可愛いみょうじと、ハバネロなんて目ではないほどの暴君である小平太が付き合っていると、そう噂が流れた時は忍たまが泣いた。医務室で優しく手当てしてくれたあの子が……!とか、笑顔にノックアウトされたのは俺だけじゃないはずだ……!とか。それはそれは先輩に同級生に後輩もろもろが嘆いていたな。俺だって少しは気になっていたけども、伊作からみょうじの話を聞いているとみょうじは小平太のことが好きなんだなあと思わずにはいられなかった。はやくくっつけよと、お前ら幸せになれよ、と……。戦う前に俺は敗北した。orz。



 さて、みょうじがいるとあたりをつけて医務室へ向かったが、あいにくみょうじは当番ではないらしい。保健委員会三年の三反田数馬によると体育委員会室では?と言われたので今はそちらへ向かっている最中である。どうやらみょうじは、委員会当番の無い日には、体育委員会と一緒に山に入り薬草を採取しているようなのだ。でも今日は委員会部屋で何かするらしいって次屋に聞いたみたいで、数馬は親切にも教えてくれた。

 体育委員会室までもうちょっと、というところで縁側に寝そべる毛むくじゃらを発見した。間違いなく小平太だ。そしてその毛むくじゃらはうつ伏せに寝ており、顎は枕へと乗せている。桃色で、柔らかそうなその枕。俺もその枕で寝てみてえよクソが!!!!

 枕とはそう、みょうじのふとももである。

 日の当たる縁側に体育委員メンバーがごろごろと寝っ転がっているが、体育委員会室は長屋の端っこなので邪魔くさいということもない。奥の柱にもたれかかってすやすやと寝ている滝夜叉丸、滝夜叉丸の背中で寝る三之助、三之助が伸ばした足に抱きつくように寝ている四郎兵衛と金吾。
 そんな後輩たちとは少し離れて手前に寝ているのが小平太とみょうじだ。壁にもたれかかり足を伸ばしているみょうじと、そのすらっと伸びた足にぽすんと顎を乗せた小平太(狼)。狼は文句なしに尻尾まで伸びきっている。そりゃあ気持ちいいだろうよ!うら若き乙女の膝枕だもんな!くそっくそっ禿げ散らかしたいくらいに羨ましい!!

 俺のざわついた精神を感じ取ったのか、狼がぴくりと耳を動かしてしゅばっと顔を上げる。そのまますっとこちらを向き、獲物を捕らえるためにカッ開いた瞳孔は、俺の姿を捉えると普通の大きさへと戻った。こええよ。
 狼はたちあがると、ぐぐっと伸びをしてから俺のところへととすとす歩いて来た。部屋の数で言うと四つほどは離れていたのに気付かれるとは。狼っつうか小平太怖い。

「何の用だ留三郎」

 く、わあっとあくびを一つかました後に狼からそう尋ねられた。知ってるか……?狼って喋るんだぜ……?と言いたいところだがこの狼は小平太である。手にしていた片手鍋の包みを差し出し、みょうじを指す。

「みょうじから用具委員会へ、修理の依頼があってな。依頼の品の納品に来たんだが」
「なまえは今寝ている。私が受け取ろう」
「あー……じゃあ後で確認してもらってくれ。確認次第、不備があれば言って来てくれるとありがたい」
「分かった。じゃあそれだけか?」
「お、おう」
「いまお昼寝中だから!またな!後でな!」

 追い立てられるように狼の鼻でぐいぐい押される。鍋を風呂敷へと包み、狼の口にくわえさせた。心得た!という風に小平太はダッとみょうじのもとへと戻って行く。犬か。あ、イヌ科だったな。
 一度ヒト型に戻った小平太は、委員会室の引戸を開けて中へ入って行った。部屋の中に鍋を置いたのだろう。再び部屋から出て来た時には薄手の掛け布団を数枚手にしていた。それを一枚一枚後輩へ掛けてやり、最後にみょうじの膝に掛けてやるのかと思いきや。小平太はむきっと上着を脱いだ。

 俺が!?と思ったのもつかの間、みょうじから少し離れた所へ、綺麗にたたまれた上着が置かれた。みょうじの体をゆっくりと横たえると、みょうじの頭はちょうど上着の上に落ち着いた。そして持ってきた掛け布団をみょうじへと掛け、小平太はぽんっという軽い音を立てて狼へと姿を変える。

 みょうじの腹あたりでくるっと丸まると、狼はみょうじの首元へとすりすり擦り寄った。くすぐったそうにしながらも、みょうじは掛け布団から手を出して、狼の毛並みを揃えるように撫でてやっていた。



「あ、留さんおかえり。なまえ居た?」
「ああ……」
「元気ないね。どうかしたの?」
「……一人身には……つらい光景だった」
「留さん何してきたの?」


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