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  しま○ら2


 バレー部は授業開始20分前には朝連が終わる。他の所と比べて早いとよく言われるが、遅刻しないよう、授業開始時には確実に着席するよう、部長の仙蔵が早めの切り上げを取り決めた。
 その分放課後の部活はいつも延長申請をしているので19時まで、みな真剣に取り組んでいる。

 今日の部活動も誰が怪我をするということもなく無事終了した。少し早目の18時切り上げなのでまだ外は明るい。
 部員がクールダウンのために体操をしている隙に、私たちマネージャーは着替えさせてもらい、入れ替わりに部員たちが着替える決まりである。小平太なんかはさっさと更衣室前まで来ているので、他のマネージャーより早めに着替えて先に出ることにしている。
 案の定更衣室前でうごうごと元気な小平太に、まだ更衣室は使えないと伝えてから、ネットやポールなどを片付けようとしている後輩の部員の元へ向かった。後ろからキュッ、キュッ、キュッとシューズが鳴っているのが聞こえる。小平太が着いてきているのだ。着いて来た小平太にネット片側の端を渡すと、持ったネットをピンと張りながら離れた。
 半分に折って半分に折って…を繰り返していると離れていた距離が徐々に近づいていく。折りたたんだネットはボール籠に安定するよう乗せ私が運び、小平太はポールを2本とも持って用具室へと入った。所定の場所にそれぞれ納めてから用具室を出ると、出しっ放しのスコアブックやらジャグやらを片付けているマネージャーしかバレー部員は体育館に居なかった。
 もう着替えておいでよの意味を込めて小平太を見るとこっくりと大きく頷いて、「しまむら!」と言いながら更衣室へ走って行ってしまった。「開けるぞ」の一言もなくドアをばーん!と開けたので、中にいる留三郎の悲鳴が聞こえてきた。キャーってお前女子か。

 ドアが閉まったと思ったらすぐに開いて、小平太と入れちがいに出てきたのは仙蔵だった。携帯を片手に持っていてなにやら操作をしている。

「剣道部、終わったそうだ」
「そう。まああそこはいつも18時までだしね」
「伊作は保健委員会だったと。体育館まで来るようだ」
「そっか。じゃあ長次に校門で、ってメールしといてくれる?」
「もう送った」
「さすが」

 2人でモップかけをしていると、更衣室からぞろぞろと部員が出てきては外へ出ていく。中には「俺やりますよ」と言う後輩もいるが、ローテーションで今日は私たちの学年が担当の週である。ありがたい申し出を丁重に断って、帰宅するよう促した。


 19時まで活動予定で、他校との練習試合間近のバスケ部が体育館の鍵を返してくれるということなのでお言葉に甘えて鍵を託した。校門へ行く道すがら体育教官室へその意を伝えておく。

「しっまーむら!しっまーむら!」
「ご機嫌だな、小平太」
「おう!パンツ買うんだ!」
「でっけー声で言うなよお前…」
「僕は何買おうかなあ」
「私は見てから決めよーっと」

 先頭に小平太を配し横に留三郎伊作が並び、自転車組の私と仙蔵はあとについていく形で校門へ向かっていた。
 下校者の多いいまの時間帯、校門へ向かう人の流れの中、大きい声で小平太がパンツと言うと何人かの男子がこちらを向いた。単純にうるせーな、という気持ちで振り返った人とパンツ見えたのかという気持ちで振り返った人がいるだろうが、残念ながらぱんちらなどではない。
 校門のところに見なれた姿を見つけた。長次と文次郎だ。
小平太がぶんぶんと手を振って「ちょーじー!もんじろー!」と呼ぶとすぐに気付いたようで2人とも軽く手を挙げた。


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