小説 | ナノ


  火薬委員会


※六年くのたま主。火薬委員会みんなのお姉さん。趣味は狩りと手芸。体育委員会が裏山のランニングに行くのにたまに同行。小平太とともに先頭を走り害をなす獣を退治している。倒した獣は捌いて毛皮をそのまま売ったり干し肉にして売ったり、毛皮を加工して防寒具を作ったり。元値はタダなので売ったお金で甘酒代、委員会歓談時のお茶うけを買っている。




 火薬委員として務めて数年経つ。六年はただ一人、私のみであるので毎日の委員会活動の声かけはさせてもらっているが、なにぶんくのたまという身分である。表立った活動は五年生の久々知兵助くんに任せきりだ。予算に関しては私も案を出すのだが、なかなかあの戦争に勝ち抜くには人数が足りない。兵助くん、転入生のタカ丸さん、二年の三郎次くん、一年の伊助くん。戦いに慣れた上級生と言えば兵助くんだけで、私も一緒に……!と何度思った事か。
 それにしても、火薬委員会は学園の火薬を一手に引き受け管理しているのだから最低限の予算とちょっとの雑費、そう例えば甘酒代とか、許してくれたっていいのに。文次郎くんは融通が利かないったらないわ。まあ土井先生がたまにおごってくれたりするけれど、それはあまりにも申し訳ないので私のお財布からちょくちょく出している。
 だって、後輩ってとっても可愛い。それこそ私が二年生の時、上級生ばかりで背の高い人達に囲まれ、尻込みしたらしい兵助くんは私の後ろに隠れて上着をぎゅうっと握っていたのだ。即、落ちた。守ってあげようと思ったし、お姉さんとしての自覚というか、後輩を指導していくのだと思うと背筋がしゃっきりした。
 話が逸れたが、後輩可愛さにただ単に私財を投げ打っているわけではない。縄張りから外れ人間に対して危険な獣たちを屠った時の、毛皮を叩いてなめして防寒具を作って売ったり、肉を部位ごとに分け、一番おいしいところ以外を売ったりしたお金ですべてまかなっている。私がポケットマネーを使った時の兵助くんが、先輩が出すなら俺も出しますと言ってくれたのだ。それはアカンと思った末の策がこれである。
 裏山でよく迷うという次屋君や、小平太においてけぼりになりがちな下級生二人が安全にいけどんマラソン出来るよう私が体育委員に申し出たのだ。裏山には狼だったり、猪だったりと色々動物が出るが、私は小平太と並走しているため出会ったとたんに瞬殺である。急所にぐっさり一撃必殺。いや、小平太と私の二本の苦無で倒しているから……二撃必殺?
 しかしそう何度も都合よく害獣が出るわけではないので、収入は多かったり少なかったりとばらばらである。保健委員会の薬草摘みに護衛として着いていった時、私は私でお花や果実を摘んでいる。そしてこれを簪や小物に加工して売るのだがなかなか実入りが良い。
 作ったものを売りに行く時期もばらばらである。雑費が底をつきそうな時や干し肉の完成時などなど、私は暇を見つけて町へ出ているのだ。そしてかならずといっていいほど小平太がるんるんしながら着いてくる。

 さて、つまり火薬委員会の雑費である冬の甘酒代と防寒具の調達、学級委員長委員会に負けないほどのお茶菓子代はこのように最上級生である私が工面しているのだ。代々火薬委員会の最上級生は、どうしても後輩を可愛がりたいがために色々としていたらしい。後輩可愛い!精神は脈々と受け継がれていた。



「なまえ先輩!」

 さてそろそろ寒くなって来たし去年私が使った毛皮を出すか……と雨の降りしきる天気の悪い今日。火薬委員会室の押入れの下をごそごそしているとすぱんと襖が開き、嬉しそうな声に名前を呼ばれた。この声はわが火薬委員会の一年、伊助くんだ。振り返ると目をまんまるにして驚いている伊助くんが襖を開けた状態で静止している。

「どうしたの?」
「えっあ、いえ、今日の活動はこちらの部屋で、とお伺いしたもので……」
「うん、今日はこっち。寒くなってきたから冬支度するよ」
「は、はい……」

 いつもははきはきしている伊助くんの返事がなぜか今日は歯切れが悪い。部屋の隅の座布団を持っておずおず、と私の前に座った伊助くん。可愛い。しかし眉が下がったままこちらをじっと見つめてくるのでもしやこの毛皮が臭いのかしらと思って急いで嗅いでみるも特に異臭はしない。風通しの良いところで保管していたのが良かったのだろう。どうしたんだ伊助くん。
 さて、この毛皮をちょっとリメイクして今冬の伊助くんの防寒具とするわけだが裁縫箱はどこへやったっけ。この間この部屋に来た時はあそこの棚に置いていたし……。あ、そうだ伊助くんの後ろの引き出しだ。

「ごめん、伊助くん」
「はいっ!何でしょうか!」
「?後ろの引き出しから裁縫箱取ってくれる?南天の模様の箱があるはずなの」
「はい!!」

 ぴゅっと引き出しにとびついて中から裁縫箱を取り、差し出してくれた。本当にいい子だ。ああ可愛い。

「ありがとうね」
「いえ、これくらい……」
「良い子いいこ」
「えへへ……あ、あの!」
「ん?なあに?」
「背後の七松先ぱ」
「なまえ!!私にもよしよしを!!!」
「い、は一体……」
「ほーらほらほらよしよし」
「むふー」

 伊助くんが固まっていた理由は私の背後、おんぶの格好で抱きついた小平太だったようだ。頭をぐりぐりと撫でまわし、首筋を優しくすりすりしてやると小平太は目を細め、よりしっかり抱きついて来た。

「小平太はここが好きねえ」
「んー……もっと……」
「伊助くん」
「はいっ!」
「なまえもっとー」
「冬になるとこんなふうに、小平太がよく来ると思うけど仲良くしてやってくれる?」
「はい、もちろんですなまえ先輩」

 やっぱりうちの子可愛い。

prev / next

[ back to top ]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -