小説 | ナノ


  Uニクロ3


 さて店内に入ってみると、さすが天下のユニクロ様であるといわんばかりの人、人、人。黒山の人だかりとはこのことである。目玉商品であろうメンズのカラーTが入ってすぐのところに置いてあり、さっそくみな好みの色を手に取っていた。
 Vネックにクルーネック、リブタンクトップの3種類で、色とりどりの商品が並んでいる。おそろいか色違いで!と小平太は言っていたが、この290円のカラーT、メンズしか無いではないか。ウィメンズであれば、女性らしいラインが強調されるような縫製だが、メンズでそれは見込めない。さらには何と言ってもサイズがないのだ。メンズのSであろうとも女性が着用すればやはりちょっと大きいし、それならワンピース風に…と思って大きいサイズを選んだとしても襟ぐりが開きすぎてだらしがない。

「メンズしかないのかあ」

 ユニクロだったらおそろいでも周りの目はあまり痛くないだろう、おそろいおそろい!と思ってちょっと浮かれていたので少しばかり残念に思いながらそう呟く。Tシャツを広げて形を見ては畳んでいると、小平太がメンズのSサイズ、白のタンクトップを差し出してきた。
 これをどうしろと?と思い首をかしげる私に白いタンクトップをあてがうと、やっぱりもうちょっと大きいサイズのがいいかなあと小平太は言った。サイズもサイズだし、部屋着にくらいしか出来ないと思う、と言うと小平太はにかっと笑った。

「裸の上からこれ一枚だけ着てくれ!乳首とか透けるの興奮する!」

 思い思いのシャツを選び終わったらしい友人たちは、私と小平太を置いてささーっと店内へ散って行った。




 小平太の買い物ばかりに付き合っていると自分の買い物も出来なくなってしまうので、目ぼしいものを見つけに行こうと思って別行動を提案した。だが小平太はすでにチラシを見て目星をつけていたらしく、色だけ見てくれと言うのでメンズコーナーへ着いていく。

「これなんだが」
「カーゴパンツかあ」
「色はどれがいいかなあ」
「これとかいいんじゃない」

 鏡で見ておいでよ、と促してやる。腰にあてて鏡を見ていたかと思うと、色は気にいったようですぐにカゴに入れた。あとで試着する、次はステテコだ!と言うと、カゴを持っていない方の手でぎゅっと手を繋がれた。

 無地ではなくかわいらしい生地のステテコとシルキードライのステテコを1着ずつを選び終える。今度はなまえのだなー。鼻歌を歌いだしそうなほど機嫌の良い小平太は、繋いだ手を時折強く握ったり、繋いだ手の親指で私の手をすりすりしたり。なんとなく動物のマーキング行為を連想させる動きである。
 ウィメンズの棚を眺めながら歩き、気になった商品を見つければ立ち止り物色、を続け、ショートパンツ、ボトムスと部活用のテンジクTシャツを数着カゴへ入れた。どの色にしようかと悩むと小平太が、なまえにはこれが似合う!と選んでくれるので、一人でユニクロに来た時より圧倒的に早く、商品を選び終えることが出来た。

 ウィメンズコーナーから試着室へ向かう途中、サラファインキャミソールが安くなっているのが目に入った。小平太と繋いでいる手を外して数点選んでいる中、横からすっと差し出されたのはワイヤレスブラだった。サラファインから顔を挙げてそちらを見やると、入店時のタンクトップと同じくらいの良い笑顔。ブラを持った小平太が言うに、このブラはホックがないので、金具がひっくり返って違和感を覚える、ということもなくリラックス出来るらしい。ワイヤレスなら苦しくないし、寝るときに付けていれば胸が流れてしまうことなく形が保持できる。安いし買ってもいいかもしれないと思ったが続けられた小平太の言葉で購入の考えは掻き消えることとなる。

「ホックを外さずに、上に上げるの。えろくていいと思うんだ」

 だが断る。


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