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  昼休み


【昼休み】

 バレー部スタメン3年が揃って視聴覚室へ集まったのは、県下において有力な高校の試合DVDを見ようということになったからである。視聴覚室は使用者の名前を書き、用途を申請さえすれば誰でも使用可能なのだが鍵返却後には事務員の先生が、施錠や器具の状況、机や椅子の状態のチェックが入るようになっている。使用中に必ず先生がこっそり抜き打ちで訪れることになっているのでエッチなビデオを見ようものなら停学ものなのだ。
 まあ、いまだにそういう奴は居ないらしいのだがもしかしたら見周りの先生を懐柔した可能性はある。申請者が男子だったら女の先生がチェックに来るし、逆もしかり。最初からこの態勢が採られていたとは考えにくいしな。

「なあ、今更だけどここって飯食って良かったっけ?」
「鍵借りた時は電子機器から離れてならOKって」
「アバウトだな」
「暖房つけよ〜暖房。この部屋寒すぎ」
「リモコンどこ?」
「おいDVD寄越せよ」
「全員で喋るんじゃありません!及川母さんは1人しか居ないんですからね!まずはまっきー!」
「はい、暖房つけたい」
「入口の横をご覧ください!次、岩ちゃん!」
「うるせえ」
「DVDなら俺が持ってます!次まっつん!」
「TVのリモコン」
「薄型TVの足元!以上終了!ハイみんなお弁当箱ここに置いとく!」

 じゃんけんに負けた奴が全員の弁当箱を持つことになったのだが、こういうのは言いだしっぺが負けるようになっている。及川は一列に弁当箱を並べたが、寄り弁にしてないだろうなと苦言は呈しておく。
 飲み物は各自で、ということだったので俺は母さんが持たせてくれた水筒を持っていた。電子機器から離さなければならないのでまず机に置いて、及川からDVDを強奪した。その際喘ぎ声を出しやがったので二人に叩いておいてもらう。

「流すぞー」

 デッキにDVDを入れ操作をし終えくるりと振り向くと、三人が横一列に並んで口いっぱいに飯を頬張っていたので少し笑えた。ポケットから携帯を取り出して写真を撮り、三年用のLINEに飛ばす。

「ぶっは!及川の顔やべえwwww」
「んぐっ」
「んー俺ほっぺ膨らんでてもイケメン?」
「お前らケータイ見んのはええな」

 さて俺も弁当、と蓋を開けたところで及川が声をかけて来た。

「ねー岩ちゃん。二人にはもう渡したんだけどさー」
「あん?」
「ちょっと卵焼き置いて。あんね、猛が人数分作ったからって、おおっと卵焼きほうばっちゃうか〜」
「ん」
「俺が、この色」
「俺も、この色」
「んで、岩ちゃんにはこの色。おれとオソロだよ〜」
「ふなふほふぁふぃ」
「胸糞悪いだなんてお口の悪い。猛がさあ、主将と副主将はセットだって思ってて(嘘だけどね俺が青色は2本だけでって指示したんだけどね)」

 花巻、松川の左腕には既に紫を基調としたミサンガが巻かれており、及川の左腕には青と水色のミサンガが巻かれている。青が巻かれた手にはもう一つ青がぷらりと下がっている。アクセサリーの類とは全く縁がないのだが、猛が作ってくれたと言うなら話は別だ。
椅子を及川に寄せ背中を向けて座る。つけろ、俺は飯を食う。
 少し笑って俺の手を取ると、鼻歌交じりにくるりと巻きつける。かるくきゅっと結んでミサンガというやつはこれで装着OKのようだが、なんだか生活しているとすぽっと抜けそうだ。鮮やかな青色が、紫色が、4人の腕に巻かれている。

「……これであってんのか?」
「ダーイジョウブだって。あ、まっきー!型物岩ちゃんの初アクセ!写メって〜!」
「なに岩泉初アクセなの?」
「おう。つける必要もなかったし興味も特になかったしな」
「これはキョウミあったんだ?」
「お前らとお揃いなんだろ」
「岩ちゃんカッコイーー!!はいチーズ」
「ん」

 部活前には花巻が手伝ってほしい事があると言う。俺に出来ることならと了承したが一体何だろうか。

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