×海賊
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リクエスト【メシウマちゃんのクロスオーバーが見たいと思ってしまいました。例えば×OPだったらサンジとはる美味しい海賊飯を作ってくれるんじゃないですかね!】


※グロ注意かもです!
※お名前変換ありません。



 新しくお店を出そうと思って訪れた地で、ちょうど調査兵団が帰って来ていて、凱旋に出くわした。馴染みの顔が隊列にいることにほっとしていたのつかの間、調査兵の母親という人が団長さんにつかみかかる。団長さんは、息子さんが巨人に食べられてしまった事を伝えていた。取り返したのは腕のみという強烈な事実は、私に衝撃を与えた。壁外にはやはり強大な敵が居るのだ。人類が太刀打ちできないような、恐ろしい敵が。
 もとの世界であったら想像もつかないことだ。戦争から隔離され、殺人事件などはテレビの向こうの話であり、あからさまな脅威を身近に感じるような出来事と言えば天災くらいしか。
 壁の分厚さがどの程度のものか分からないが、石造りの壁だけでその敵から逃げられていると思っているこの世界の人達はどうかしている。かといって戦闘能力の低いわたしが人類の未来のために何が出来ると言うわけでもなく、毎日を生きていくので精一杯だ。

 ふうとため息をついて、パンの入ったバスケットを抱え直す。慣れない道を進んでいくうちに一つの通りへと入った。男の子三人組が金髪の子を囲んで殴ったり壁に押し付けたりしていたので、助けなきゃ!と思うのだ力に自信がないし、その場でおろおろするしかない自分はとても情けなかった。
 結局金髪の子は駆け寄って来た友達に助けられていた。私はその後に声をかけ、新店舗の場所を彼らに尋ねた。助けられなかった罪悪感から、袋詰めしていたかりんとうもどきとカステラもどきを差し上げることにする。道を教えてくれたお礼だよーと言って渡したのだが、実際は罪滅ぼしですごめんねアルミンくん。女の子かしらとおもっていてさらにごめん。



「では、こちらを買うことにします」
「あらあ!ありがとねえ。前の人がいきなり出ていきますって言ってきてねえ。家具もほぼそのままだし困ってたのよお。お嬢さんおひとりで住むの?」
「そうですね……当面はそうなります。このあたりの家具屋や布のお店を教えていただけると助かります」
「おいしいお野菜屋さんだって教えちゃうわよ!」
「ふふ、ありがとうございます」
「家の中の家財道具も好きにしちゃってねー!」
「はい、わかりました」

 おうちの代金としては少し安いお金を払い、家の鍵を受け取る。学生時代にはやった、あのネックレスを思い出すような鍵だった。

 さて、台所と寝所だけは整えておかなければ今日寝る場所がなくなってしまう。まずは寝所へ向かい、窓を開けた。一番外の壁から割と離れているが、近いと言えば近いか。まあ日差しが遮られてしまうようなことはないと思うのでいい場所だと思う。冬になるともっと影が伸びるとは思うが、なってみないと分からないし。一階のベランダのようなところに置いてあった物干し台を綺麗に拭いてから、そこに外したカーテンなどをかけていく。まとめて明日にでも洗うことにしよう。
 埃を天井近く、上から上から落としていき、湿らせた古紙をちぎって床に撒いた。古紙ごとほうきで掃いていくと古紙に埃が絡みついて結構綺麗にとれる。細かいゴミは目の細かいほうきでまとめ、ちりとりにいれていく。ふむ、上出来。雑巾で水拭き・乾拭きをすませると廊下に置いたバケツに濡れた雑巾を放りこんだ。

 水を使おうと外に出る。空が赤く染まり始め、鳥が上空を飛んでいるのが見えた。わあ、急がないとご飯作れない!と思ったがすぐに、疲れたし食べに行こうかなとも思った。
 じゃぶじゃぶごしごしと雑巾を両方とも洗い、とりあえず家具屋さんにいってお布団買わなきゃ……。そう考えていた瞬間のことだ。一瞬全ての音が消えた気がした。ばっと後ろを向いた先には最も外にあたる壁がそびえたっている。50mの、強大な壁。
 この違和感は気のせいかしら。少し高台に建つこの家から、ウォール・マリアの門はよく見えた。

 轟音とともに壁の外で、雷のような光が縦に走った。周り近所の家から「なんだ、爆発か何かか」などど言って大勢の人が外に出てくる。きょろきょろとあたりを見まわしすのだが、蒸気か爆発時の煙のようなものがもうもうと立ち上っていた方向に、みんな視線が固定されていた。
 煙が立つその場所に、赤く筋を剥き出しにした手がのぞき、その手がしっかりと壁を握った。

 ……壁を握った!

 バケツも雑巾も放り出して急いで家に戻る。掃除をするからと脱いでいた簡素なジャケットを着込んで、内ポケットにお金を詰め込む。カバンをひっくり返して鏡や化粧品などを床にばらまいて、カバンの中にはタオルと皮で出来た水筒、簡単な食料だけを入れた。
 外に再び出てみると壁を握りこんでいる巨人が、50mの壁を越え顔を覗かせていた。蒸気をもうもうとあげ、すっと壁から少しひいた。俯いたかと思うと少しその状態が続いき、そうしてさらに壁をしっかりと握りこんでいた。

 まさか。
 壁から急いで離れなければ。あの巨人は壁を壊そうとしている。

 家の前の階段を数歩降り、ウォール・ローゼに続く道に向かって走り出してすぐに、後ろから突風が吹き体勢が崩れた。しゃがんだ状態で風をやり過ごしていると、坂道であるにも関わらず、坂を駆けあがるように瓦礫が転がって来ていた。よけきれず足が挟まれ、自力で抜けだそうとするが私の力では動かせそうもなかった。てこの原理を使って……!と思ったのだが近くに落ちているのは瓦礫ばかりで、遠くの方にカバンが落ちているだけである。

 近くを通る人たちに助けを求めても、みな自分が助かるのに必死のようで、私の足を潰している瓦礫をどかそうとしてくれる人はいなかった。中でも酷いと思ったのが火事場泥棒のようなことをしている人が居るということだった。私のカバンも持って行かれてしまった。足を切るしかねえんじゃねえか!と思わずもれたような笑いをあげながら走り去ったのだ。助けてくれてもいいのに。

 泣きながら必死に瓦礫を押すのだが、一向に動きはしないし、徐々に周りを通る人の数も減って来た。こんな時少女漫画だったら「助けてリヴァイ!」って言うなり思うなりすれば助けに来てくれるのがセオリーだが、あいにくとフィクションの世界の中の出来事ではない。まぎれもなく私はこの世界で生きている。死にたくなるような痛みを感じているのだから。


 どくどくと心臓が脈打つのが分かる。血が抜けていっているのか視界がぼんやりし始めた。ジャケットのポケットから白のスカーフを取り出す。せっけんの匂いがするこれは、壁外調査へ出掛けていたリヴァイのものだ。一枚だけ置いていったので、私が借りている。
 借りたまま返すことが出来なくなりそうだな。ぎゅっと握るとじんわり赤く染まってしまった。手のひらにもすり傷はあったようだ。よごしてしまったらリヴァイは怒るだろうな。くすくす笑いながらスカーフをシャツより下、下着の中に入れ込む。スカーフを誰にも取られたくなかったし、リヴァイの首元を飾っていたスカーフを肌で感じていたかった。

「……最期に会いたかった……話をしたかった……」

 この世界に来て5年後、リヴァイに出会って、それから10年一緒にいた。隊列の中でちらりと彼の顔を見ただけだなんて、物足りない。最期の時までリヴァイのそばに居られると思っていたのに私の最期は出血性ショック死とか。布団の上で看取られたかった。

 べそべそと残り少ない体力を使って未練を思い出していたのだが、断続的な地響きが身体に届く。顔をあげると隣の通りを巨人が歩いているのが見えた。ある一つの家を掘り起こしたかと思うと、巨人の手には女性が捕まっていた。女性が自分を掴んでいる手を殴って抵抗するが、居にも介さず、二つに折り曲げようとする。届くはずはないだろうが小さな石ころをその巨人に向かって投げた。弧を描いて屋根を越え、ちょうど目に当たったようで、女性を放して目をおさえた。
 やった、と思ったのはそこまで。私の視界に影が差したのだ。振り返ると3mあるのかというくらい小さな巨人がしゃがみ込んでいて、巨人の大きな眼に、ボロボロの私が映っていた。
 口の周りを真っ赤にしたその巨人は、嬉しそうににっこりと笑い、上手く聞き取れない発音で「……の…み」と言うと瓦礫に挟まれたままの私をがっしり握り、無理やり引き抜いた。圧迫されていたところから足がちぎれ、痛みで悶えているうちに巨人の両手に大事そうに抱えられた。
 小さなこの巨人はどこかを目指して走り出すのだが、屈強な他の巨人の足にはじかれてしまい、私も広い道に投げ出された。

 ……リヴァイ。

 意識が続いていたのはここまでであった。


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