×Fate/Zero
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リクエスト【×fate セイバー(アルトリア)なら見た目14,5で、英霊無双したとしても104期とも絡みやすいし(エレンは目を輝かせて尊敬の眼差しを向けてくれそう)、メシウマちゃんのご飯にも釣られてくれるし(ギャップ)話が広がりそう(*´∇`)】


※時間軸が本編とずれています。注意。
本編:リヴァイ(30)とナマエの歳の差6歳
これ:846年のお話。兵長26歳、ナマエ16歳。歳の差10歳です。




「一人で裏路地をふらつくな。泣きたくなるほど怖い思いをしたくなけりゃな」

 幼いころリヴァイにそう忠告された。その時私は中身だけなら30近いおばちゃんなわけで、裏路地に入ってしまえば東洋人に似た幼い女の子がどうなってしまうかくらいは分かった。ちらりとリヴァイに連れられて見た裏路地とやらは薄暗く、また淫猥なお店がそこかしこに見受けられたのだ。そんなところに迷い込んでみろ、またたく間にいつもの生活よさようならに違いない。春を売るようなところ、あやしげな薬を売るようなところ、などなど真っ当な暮らしをしていない人たちの集まりなんだと、露店のおっちゃんたちも教えてくれた。かみさんが怖くて行ったことがねえんだ!とおじさんは笑っているが、このように明るく活気に溢れた場所から然程遠くない場所に、あのような犯罪の横行していそうな場所があるのは、元日本人からしてみれば不思議極まりなかった。さらに王政府のお膝元といっていいほどのこの地には、地下街という危ない区域があるとのこと。そんな怖いところ頼まれても行かない!


 ……と思っていた時期がありました……。


 成長して、危機回避能力もそれなりに身についただろうと思った16の時に、調査兵団の休暇を使って久しぶりに訪ねてきたリヴァイは、うちに泊まらず帰ってしまった。
 昔からどこに住んでいるとは教えてくれなかったので住んでいる場所をつきとめようと、好奇心に駆られリヴァイを尾行していたのだが、ふとした瞬間にリヴァイを見失った。これはまずいとすぐさま引き返そうとしたのだが、清潔感なんて知りませんよといった風情のお兄さん3名に囲まれる。あっこれ私おわた……。なんて一瞬は余裕をこいた。しかしじりじりと距離を詰めてくるお兄さんたちは興奮した様子で頭の先から足元までじろじろと観察をしてきており、恐ろしいことこの上ない。後ずさりをしていた方向は壁であったので、逃げ道は無くなってしまった。

「お嬢さんかわいいねえ、いくつ?」
「綺麗な肌をしてんねえ。髪の毛もサラサラツヤツヤだし」
「成長しきってないのがいいよね……」
「おめえ黙ってろさっさとやれ」
「しゃべんなさっさと捕まえろ」

 「道が分からなくて困ってたんです」とか言ってくれ。
 心の中の訴えむなしく、刃物をとりだしてきたお兄さんはさっと詰め寄ってくる。後ろの二人に「はやくしろよ」と急かされたもんだから目測を誤ったのかそのつもりだったのか、脅しで振った刃物が私の腕を裂いた。抑えても抑えても血が出てきて、服だけでなく地面も汚していく。

 リヴァイの言った通りにしていれば。一人でこんなところをうろつくんじゃなかった。

 痛みと悔しさで泣いて後悔してもとうに遅い。悪態をつくお兄さんの声に顔を上げ、目に入ったのは焦った表情をしたお兄さんが刃物を振りかざし、柄で殴りかかってこようとしているところだった。殴られて気絶してどこかも分からないようなところに連れて行かれるんだろうなあ。日本じゃあこんなこと滅多に遭遇しないのに。リヴァイにおばあちゃんごめんなさい。ナマエは言いつけを破ってしまいました。リヴァイにもう二度と会えなくなるのは、……嫌だなあ。

「うおお!!?」

 ドンっと音がするくらいのとてつもない風と光に、辺りが一瞬にして包まれた。
 目の前のお兄さんが情けない声と潰れたような声を出し、鈍い音の後に仲間のもとへふっ飛んで行った。風で飛びそうになった私の背中を、しっかりと支える手がある。大きくはないが温かみのある手だ。暴風でぱっちりと目が開けられないが金と蒼色が見えるような……?

「問おう」

 手の主が喋り出すと同時に、風と光が止んだ。遠くの方でお兄さんたちが転がっているのが見える。

「あなたが私のマスターか?」






 私の危機に飛び出して来たこのイケメンな女性はアルトリアさんとおっしゃるらしい。地面に落ちた血が触媒になったのではとのことだが、「アルトリアさーん!」と呼んだ覚えもないし、「ナマエの魔力をいただいて、私は現界している」と言われても魔力なんて概念はもとの世界でもこの世界でも存在しない。わけがわからないよ……と裏路地で頭を抱えていたのだが、アルトリアさんが私に触れているとみるみるうちに腕の傷が塞がって行ったため、さらに頭を抱えることになる。

「なんで……」
「恐らくあなたが全て遠き理想郷(アヴァロン)をお持ちなのだろう」
「あばろん……」
「アヴァロン。私の宝具である聖剣の鞘がナマエの中にあるのだと思う」
「それがあると傷が治るんですか」
「ええ。ん……ナマエ、やはりあなたが私のマスターのようです」

 ほら、念話ができるでしょう?声として音が出ていないのに直接頭に、にっこりほほ笑むアルトリアさんの声が響いた。私には超能力が備わっていたとでも……。いやまさか本当に魔力が?いろいろ考えたが、私自身、現代日本から古き良きドイツの街並みのようなこの世界にトリップしてしまった、という前例があるため受け入れることにした。これは、そういう事象だと。気を失い転がっているお兄さんたちをアルトリアさんがまとめて縛り上げ、その場に放置した。




「サーヴァントは霊体化をすればマスターであるあなた以外には見えなくなる。食事も睡眠もいらない。しかし……私は霊体化が出来ないのだ。すまないがナマエ、軒先でいい。そこらで雨露をしのがせてもらえればいいのだが……」

アルトリアさんはそう言ったが、仮にも窮地を救ってくれた恩人に対してそのようなことは出来ない。一人で寂しいから、うちで暮らしてください。ぺこりとおじぎをしてそう言うと、アルトリアさんは嬉しそうにうなずいた。

 正しい歳は分からないというアルトリアさんはお姉さんのようでいて、ご飯を前にすると途端に幼くなる可愛い人だった。細身の体に反して食事量はとんでもなかったが、作り甲斐があって楽しかった。
 おばあちゃんが死んでしまってからというもの、部屋をそのままにしているのだがそこを使ってもらうわけにもいかず、私と一緒のベッドで寝ることになった。そっと布団をかけてくれ、優しいまなざしで私を見るアルトリアさんは、ぽつりぽつりと自分のことを語ってくれた。数々の武功を立てたことがあるのだが、選定の剣(カリバーン)を引き抜いたその瞬間から、私は王になったと、その時に肉体の成長が止まってしまったと。
 私の過去は……どこから話せばいいのか。とくに誇れるものでもなかったし、二つの世界の話なんてしたらアルトリアさん混乱しちゃうだろうし。そう思ってまずはこの世界のことを話すことにした。話しているうちにお互い眠くなって、気がついたら外が明るくなっていて朝を迎えていた。



「この世界にはね、巨人がいるんですよ」
「なんと……それは人類の敵なのか?」
「人間だけを捕食するみたいです」
「ということは、巨人を倒すための軍があるのだろう?」
「調査兵団がそれになるのかなあ。壁の外はどうなっているのか調べる人たちが居てね、でも壁の外に出ちゃうと巨人がいっぱいだから、巨人を倒すために3年間は訓練をするんだって」
「訓練するのか」
「そうそう。訓練兵団って言ってね、ここからだと……どこが近いのかな。街から結構離れてるからすぐには行けないけど各地にあるんだよ」
「ナマエは入らないのか」
「リヴァイにだめって言われちゃった」
「リヴァイ?」
「あっえっとね、私パン屋さんしてるんだけどね、そこでのー……従業員さんかな。もう辞めちゃったんだけどね、いまは調査兵団に入って活躍してるんだって」
「ナマエは……」
「ん?」
「調査兵団に入りたいのではないのか?」
「……」
「あなたがそこへ行くというのなら私も行こう。あなたが壁の外へ行くというのなら私も行こう。命をかけてあなたを守ると誓う」
「うん……うん、そうだね。アルトリア、一緒に行こう。私も頑張るから」
「ナマエ……泣かれると私は弱いのだが。……私の胸でよければ存分に泣くといい」
「うん、ありがとう……」



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