×海賊
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リクエスト【メシウマちゃんとワンピースのコラボが読みたいです!ルフィやその他に気に入られてクルーに勧誘されたりしたらおもしろそうだと思います!そこにリヴァイさんがいてもいいかも…!】




 私はどうやって死んだのかも覚えていないが、背が低く目つきの悪い彼との幸せであった時の思い出しか、今の私の中には残っていない。あちらの世界で生を終えてから、あの世界のことを思い出すことは少なくなった。
 なにしろ今生きているこの世界では、巨人よりも海賊というものが広く浸透していた。巨人は居ないわけではないが、島によってはあまりなじみがないようだ。お隣のお隣くらいの島に、巨人が立ち寄って花の苗を買ったらしい、という話がこの島にまで来たのだが、それを聞いた時はびっくりした。巨人がお買い物をした、しかもお花の苗。これは巨人とヒト間で意思疎通が可能であり、何かを育てることが出来るということだ。私のような生き物をヒトと、人間とするならばの話だが。


 私の住む島は日本のように四季があるため、農業をすることで大部分の島民が暮らしている。ほぼ第一次産業でもっている島、いつの時代の日本だと幼少期は思っていたが、成長するにつれ色々なことに手を出しているのだなあと気付けた。成長とともに産業が発展して行ったという点もあるとは思う。
 徐々に第二次産業が増えてきて、私が18になる頃には、第三次産業も割と受け入れられてきた。私が特技を活かせる職業といえばご飯を作ることだ。これはあちらの世界でもそうだった。
 しかし飲食店はもともとすごく厳しい位置にあったのだ。ご飯は自分の家で食べるもの。この考えがほとんどの住民の中に根付いていたものだから、食事処を建てたかった私としては苦戦を強いられるだろうなあと思っていた。そんなさなか、お隣町に飯を食わすところが出来たらしいと噂が流れてくる。私は来た!と思ってすぐに働かせてくれと頼みに行った。これは15の時の事だ。
 若い子には料理を作ってもらうより、接客をお願いしたいと言われたので、主に接客を担当していた。だがキッチンが忙しそうだからとそちらを手伝ってからは、作る方に回されることが多くなる。もちろんキッチンだけじゃなく、キッチンエプロンをつけたまま注文を受けたり勘定をしたりもする。
 いまこの店で働くスタッフは接客には可愛いお姉さん、そして素直な男の子の2人で、キッチンはオーナーのおじさんと私の2人。おじさんとしては、とりあえず細々と経営をするつもりだったらしいのだが、思ったよりお客さんが来くるものだから手が回らなく無る。そんなところに私が働かせてくれ!と訪ねて来たため、募集すれば従業員が来るのでは、と思ったらしい。募集をかけて見ればすぐにお姉さんと男の子はやって来た。



 海賊という存在が広く浸透しているだけあって、グランドラインという土地柄、
島には海賊も来たが、海軍も来た。数少ない食事処であるうちを利用していくのだが、なかなか海賊も海軍も性質が悪い。酔っぱらってしまえば賊も軍も一緒である。酒瓶を割る、グラスを割る、皿を割る、椅子を壊す、机を壊す。海軍のほとんどが「悪い悪い!」と笑いながら修繕費を多めに渡してくれるのだが、海賊は驕ったやつらが多く逆ギレされまくった。もちろん海賊にもいい人たちはいるようで、テンガロンハットの半裸ともっふもふの青い鳥が来た時なんかは思わず「触らせて下さい!」とバイト君と一緒になってもふらせて貰った――テンガロンハットの人の腹筋も。青い鳥は悪魔の実の能力者とやらだったらしく、私がもふもふしている最中に人の姿に戻ってしまったので、私は痴女のようだった。(彼らが白ひげ海賊団であると後で聞いて私たちは腰が抜けそうになった)この人たちが引き連れて来たお客さん達もテンションが上がって店の物を壊してくれたのだが、代金は多めに払ってくれた。

 今回の客は少人数ではあるが、港に停泊している船を見た人によると海賊の集団らしい。そういえば新聞に挟まっている手配書で見たような気がする顔が並んでいる。緑髪の人の目つきの悪さはリヴァイを彷彿とさせる……。
 麦わら帽の人が「とりあえず肉!!」緑髪の人が「とりあえず酒」、帽子をかぶったトナカイさんが「わたあめ!!」、他にも「コーラ」だの「ディナーセット、アイスコーヒーと本日のケーキでお願い」などなど、各自自由に注文をしてくれた。出せるものに関しては順次出すつもりだが、わたあめは作れただろうか。オーナーに聞いてみなければ。

「わたあめは作れるかどうか、料理長に確認して来ますのでお待ちください。他にご注文はございますか?」
「肉は骨つきで頼む!!」
「はい、かしこまりました。ディナーセットのアイスコーヒーとケーキはお食事後にお持ちいたします」
「ありがとう」

 麦わら帽の人の名前はなんだったかなあ。懸賞金がすごく高かった気がするんだけど名前までは見てなかった、……元気いっぱいで、サシャちゃんみたい。
 すぐにお水とおしぼりをお持ちします、と下がろうとしたところで、あとから4人来ます、とエキゾチックなお姉さんに言われた。机をもう一つ繋いで椅子も移動しなきゃ、と思ってすぐ、「俺がやっときますんで、ナマエさんは注文通してきてください」とバイト君が言ってくれた。よろしくお願いします、私は急いでキッチンへ下がる。

 あの人たちだって悪い例のようにキレるに違いないと、お姉さんは海賊が来ると怖がって洗い場に行ってしまう。そのためいつもは必然的に接客はバイト君と私になるのだが、お水とおしぼりを運んでくれたお姉さんは、今回は大丈夫!と意気込んでいた。どうやら遅れて来た仲間がイケメンだったようだ。バイトくんが顔がいいって得だよな、とため息交じりに教えてくれた。オーナー、笑っちゃだめです。

「あ、ナマエちゃんディナーセット3つ、アイスコーヒー2とアイスティー1。オーナー、チャーハンセット1です」
「はーい」
「チャーハンセット了解ですー」

 それならばとキッチンにこもって骨付き肉はオーナーが、他のお客さんの接客はバイト君、お酒はお姉さんがそれぞれ担当した。私はディナーセットの前菜とわたあめを作らせて貰った。
 オーナーに聞いたところわたあめを作る機械は持っているとのことだった。なんと飴玉でわたあめが作れるらしい。前菜の準備を終えお姉さんに提供をお願いして、私は飴をざらざら取り出した。ぶどう、りんご、みかん、レモン。この4種でわたあめを作ろう。小さめの方が色々な味が食べられるだろうと思ったので、2つずつ飴を並べて置き、割り箸も準備した。空回しの時間が割とあるらしいので、ディナーセットのパンとポタージュスープの準備でもしておこう。トナカイさんには少し待ってもらうことになるので、試作品のパンでも食べてもらおうか。浅めのバスケットに、店で出しているパンと、今日の昼に試しで作ったパン、ディナーセットのお客さん用のパンを詰める。ポタージュと、チャーハンセットのオニオンスープをそれぞれ人数分注ぎ、お姉さんに持って行って貰う。私もバスケットにトングを入れ、パン用の皿を片手にホールへと出た。

 ホールが見渡せるところまで来て気付いたのだが、海賊さん達のテーブルに、まだお姉さんは捕まっていた。机が1つ追加で繋がっており、4人増えていた。鼻の長いキノピオみたいな人、オレンジの髪をした元気そうな女の人、後ろ姿だけだが金髪で黒スーツと、黒髪のツーブロック。あれ、この声は。

「ですからこれは先程接客させていただいた従業員が……」
「俺は会ってないな。呼んでもらっても良いか」
「あの、なにか彼女が不手際を……?」
「そういうわけじゃない。呼んでくれればいい」
「おっめえ今日はよく喋るなあ!」
「ルフィ、俺はもともと結構喋るんだって何度言わせる」
「あら。兵長さん、彼女よ」

 振り返った顔を見て、お皿もパンも落としそうになった。バイト君が走り寄り持ってくれたので落とさずに済んだが、立ち上がった彼の姿を見て涙が溢れた。

 リヴァイ。
 リヴァイだ。
 あの絶望的な世界で私を守ると言ってくれた、優しい人。

「ナマエ、探した」
「うん、ごめんね……」
「また泣いてんのか」

 頬に触れて流れ落ちる涙を親指で拭ってくれるが、目から落ち続ける水量は衰えることなくこぼれていく。涙でぼやける視界で、リヴァイが眉を下げているのが見えた。彼はふ、と笑うと頬からうなじへと手を回し、私を抱き寄せた。背中と腰に彼の手が回り、ぎゅうっと抱きしめられる。相変わらず力が強いなあと思って、泣きながらも少し笑ってしまった。……リヴァイの匂いがする。

「リヴァアアアアアイ!てめえ女の子を泣かせるとは!!」
「ちょっとサンジくん静かに。すっごくいい雰囲気なのよ!」

 はっと我に返って周りを見渡すと他のお客さんや海賊さん、そしてオーナーたち従業員に温かい目線で見守られていた。恥ずかしさのあまりリヴァイの腕から抜けだそうとするが、この拘束は強すぎて無理だ。離して!と頼んでみてもリヴァイが立つ位置が変わっただけで、後ろから抱きつかれている。生温かい視線は拍手へと変わった。


 あなたをはりつけたまま厨房には立てないというと、リヴァイはホールとキッチンの出入り口に腕を組んで待っていた。ここならいいのか、じゃない。座って待っていてくれればいい。
 再会や離別を題材にした小説が好きな、オーナーとお姉さんに「今日は上がって彼とお話しなさい」と言われてしまい、私は海賊さん達とご飯をご一緒することとなる。

「ははっ!リヴァイがおもしれえ!!なあなあ、おめえ海賊にならねえか?」
「えっ海賊はちょっと……戦えないし」
「大丈夫よ私もほとんど戦えないし。戦いなんてのはこいつら怪物組に任せてりゃいいのよ」
「ナミ、お前本音は?」
「ラブコメが見たい!」



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