ネタメモ(妄想とか) |
2012/12/18 01:47 私たちは長いこと刃を交えたが、私が気を抜いた、その瞬間に喉を刺されて殺されてしまったので彼のその後は知らない。そもそも彼は私のことを知っていたのだろうか。いや、知らないだろうなあ。会話らしい会話もしたことなかったし、私の印象なんてそこらへんのくのたま、とかそういう程度だろう。私は、好いていた彼によって、彼の手で殺されたのだ。喉に触れてみるが何の変哲もないすべすべの肌である。今生において前世の傷は受け継がれていないらしい。 目の前の砂の山のふもとから、ずぼっと手が出てきた。私の手と同じくらいの大きさで、ぷにぷにした紅葉の手。ためしに柔らかく握ってみると温かかった。今度はここで生きるんだなあと、その温度を感じたことによって私はこの生を受け入れた。 「つながった!」 紅葉の主が可愛らしく声を上げた。繋いだ手を今度はあちらからぎゅっと握りこんできて、狭い洞穴の中でふるふる揺さぶった。温かい手をしている。 「#なまえ#ちゃん、つかまえた」 手をつないだまま、砂の山からひょこっとこちらを覗いて来たのは、私を殺した七松小平太だった。 |