???による回想

今だから、言えることがある。
ハリーは自身の叔母一家について考えた。

自分がされてきたことに対して、叔母一家を恨んでいるわけではない。ただ、責任がすべて叔母一家にあるかと言えば、それは否だ。

魔法界は能無し。

それがハリーの至った結論だった。

彼らは、ハリーをマグルの叔母一家の家に置くことで安全だと考えたかもしれない。
だが、彼らは叔母一家の事情など気にもしていないのだ。

おじさんは会社を立ち上げているし、確かに家は二人の子供を育て上げられるほど裕福だったであろう。
しかし子供一人育てるのは大変ではない。家庭によっては夫婦で考えて計画的に子作りするところもあるぐらいだ。
ハリーとダドリーの年はそうそう変わらないし、学年的には同い年だ。
魔法界は、一人の女性がいきなり「これあなたのお姉さんの子供なので育てろ」なんて言われて「はいわかりました」とでも受けると思ったのだろうか?
叔母さんからしたら、ダドリーが生まれて授乳やらで大変だった時期かもしれないし、夜泣きに悩まされてよく眠れなかった時期かもしれない。
そしたらもう一人同じ年頃の赤子を育てろというではないか。しかもおそらく無償でだ。

この時点で、ハリーがマグルだったとしても、家庭内で嫌われる要素となっていただろう。

そして大事な点。
それはハリーが魔法使いの血を引いていることではない。
一番大事なのは、ダーズリー家の妹夫婦の死因が「魔法」であることなのだ。

手紙にはつらつらと事情が書かれていたらしいが、ダーズリー一家はただのマグルなのだ。
彼らは魔法使いに襲われれば、身を守る術を持たない。
妹夫婦の死因は得体の知らない魔法というもの。
しかも育てろと言われた姪も命を狙われていると来た。
自分たちは魔法が使えないし、姪を育てろと言われたし、それを断ればもしかしたら自分たちもその魔法で殺されるかもしれないし、その姪は妹夫婦を殺したやつに命を狙われているらしい。

きっとダーズリー夫婦は恐怖におびえて暮らしてきたに違いない。

子供を二人育てることになり、いつ魔法で殺されるかわからない日々。

ハリーを迫害することが正しかったことだとは思わない。実際ハリー自身辛い思いをしてきた。
だけど。
もしハリーを迫害していなかったら、今頃叔母さん夫婦は心身ともにボロボロだったのではないだろうか。日々積もっていったであろうストレス、それに伴う健康状態の悪化。

ハリーは叔母夫婦から受けた虐待について許しているわけではない。

ただ、思う。

叔母夫婦を責めるのは間違いであると。
こんな目に合わせたのは魔法界であると。
そういえばハグリットが迎えに来たとき、自分がハリーを叔母夫婦に預けたくせに、僕がされた仕打ちに対して叔母夫婦を貶していたな、と。

魔法界は、能無し無責任だ、と。



???による回想
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