15. I love works without danger!
「にゃー!!!」
サスケの腕に抱かれるは一匹の猫。暴れて暴れてそこから抜け出そうとしていた。
「にゃー……」
猫語なんてわかるわけではないが、「お前もかわいそうなやつだな」という憐れみを込めて鳴き声を真似してみる。お前の人生はお前のものじゃなくて、食物連鎖の頂点に立つ人間のものになっているんだ。人間じゃない者には人権なんてないんだよ……。
もちろん鳴き声が通じたとは思わないが、そのまま静かになった猫である。この里のお偉い人?にあたる感じの人の飼い猫で、すでに脱走回数は両手では数えきれないほど。そのたびに依頼が舞い込んでいるので、里からしたらありがたいお客だが……。
嫌がる猫を飼い主に返すとか、うん、精神的にオレらが辛いですわ……。
しかも我らも無償ではいかない。
危険性を伴わないがために下忍にあてがわれる仕事ではあるが、危険性を伴わないということが無傷で済むということにはつながらない。
毎回毎回捕まえるたびに暴れるので、ひっかかれた傷も普通にある。今日もサスケは暴れ猫を抑えるために左頬に引っかかれている。痛そう。
おとなしくなった猫を抱いて受付に行けば、そこにはマダムしじみ様が……。悪い人ではないんだよなぁ。猫を過剰に愛しすぎているだけで、でも確かに猫からしたら太った人間に体重押しつけられるように可愛がられるのは、ねぇ。
「七班だな、お疲れさん」
受付に座るのはアカデミーでの授業を終えたイルカ先生である。……もうこんな時間かぁ。
部屋からマダムが出て行ったのを確認。よしっ。
「イルカせんせー!」
「おーなんだなんだ?」
「この仕事もうやだー!」
おいおい、という顔をするのはカカシ。その通り、という顔をするのがサスケ。そして火影の前でこんな発言をしたオレに慌てるのがサクラ。
「つっても、お前らはまだ下忍だからなぁ……」
「わかってるってー」
危険性のない任務万歳ですよ。
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