1. Long time no see.


 前々世、八回目の人生を過ごしていたころの話である。自分は、恋をした。

 そこらへんにいる、一人の少年の恋だった。

 そもそも、自分は誰かと添い遂げるつもりはなかった。その前世、七回目の人生で妻というものがありながら、誰かと付き合うのは不誠実な気がしたし、いくらすでに七回目の自分ではなくても、どことなく妻に申し訳がなかった。

 これは別の話になってしまうが、自分は妻に自分が生まれ変わりまくっているのを言ってしまっている。それでも付き従って、理解してくれて、だから、だから。まぁいい、これは置いとこう。

 つまるところ、自分は浮気してしまったような気持に陥ったのだ。
 アカデミーの頃から一緒にいる女の子に恋をした。
 さらさらとした茶髪で、笑顔が素敵な、そんな女の子だった。

 告白だなんてするつもりはなかった。それでも、目はいつも自然とその子を追いかけていた。
 同じ班に配属された時は、心の中で震え、歓喜した。その子と添い遂げることはなくても、その子を幸せにしてあげたかった。子供を見守っているのとはまた違うけど、それが一番だと、自分で思った、

 その子は、一つ下の男に恋をした。

 オレはその男に何一つ及ばなかった。いわゆる天才で、一つ下のくせに、自分には手も届かないようなところに立っていた。
 そんな男に恋したのは、一目でわかった。きっと気づいたのは自分が一番早かった。いつもその子を見ていたし、そもそも伊達に何年も生きているわけではない。

 その男は、天才であったが、ゆえに。

 その子の気持ちがそいつに向いていたのは、そいつもとうにわかっていた。けど、そいつは応じなかった。知らないふりをしていた。そいつは心のどこかで、その子に好かれていることがうれしかったはずなのに。

 自分はそれが許せなかった。いや、許せなかったわけではない。気持ちはわかるのだ。それでも、どこかやるせなくて、そいつとはよくぶつかった。
 そしてそいつの考え方も自分は好きではなかった。
 いくら忍だとはいえ、世界は私情ばかりだというのに、それがわからない天才。わからないわけじゃ、ないのだろう。あいつの事情も、オレは知っていたし。

 そんなあいつがまだ生きているなら、忍になった以上会うのだろうとは思っていた。初対面のふりをして、何事もなく。
 なのに、こんな。





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