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 そんなこんなで森の中にいた。とりあえず走ってきたけど、こういう時は屋根の上を走ってきたと思われる暗部に憧れる。自分にはそういうことができないからなー。
 許可をもらったので遠慮なく封印の書をみている。まあ火影様も、オレができないのを見越して許したのだろう。でも練習してみる価値はあるとみた。

 どうやら膨大なチャクラが必要らしい。実体を分身する上に、多重であるからな。しかし心配ご無用。自分のチャクラ量なんて見たことないが、ミナト先生の娘だけあって結構多いだろう。
 説明に従って、チャクラを思いっきり練り上げる感じで――今までこんなに練り上げたことはない気がする。変化の術や分身の術に使うチャクラ量はわかっていたから――そして。

 視界が、真っ白に染まった。染まって、見えたのは赤い世界。牢の中の、狐。


――――いい年した爺のくせに、頑張りよって。

――――なん、だ?

――――おい、お前、この世界が嫌いか?

――――少なくとも、嫌いではないぜ。

――――ふんっ、つくづく人間はわからんな。どれ、貸してやろう。


「ぬっ」

 鈍い後頭部の痛みに目を開ければお月様。どうやら思いっきり後ろにぶっ倒れたらしい。失神によるものだろうか。
 さっきのは、一体……。いい年した、爺……。あれは……あれは、おそらく九尾。そしておそらくオレの記憶が見えている。貸してやるってどういう意味だ?

 そういえば体がどこか軽いし、今なら――――チャクラが使える気がする。

 あ、

「こら、ナルト!」

 イルカ先生が来た。どういうことだろう。とりあえずミズキ先生のことを話しておく。

「ミズ、」

 ほいさっ! 先生を倒してクナイを避ける。

「よくここがわかったな」
「なるほど……そういうことだったか!」
「ナルト、巻物を渡せ」

 ミズキが木の上から偉そうに指図してくる。

「……え、なんでオレ攻撃されたの??」
「いいから渡せ! 腐れ狐が!」

 おいおいおい、切れるの早すぎでねえか? 流石にオレもムッとしてしまう。

「そうだ、ナルト。お前、いつもウザがられてるだろ? そのことについていいことを教えてあげよう」
「やめろ、それを言うな!」

 ほうほう。で、その理由は秘匿義務を守らないおばさんたちによってすでに知っているわけだが……。
 まあ、いい機会だ。暗部の耳もあることだし、三代目もなんとなくわかっていたことだろうから、言ってしまおうか。

「オレが、九尾ってやつの人柱力なんだろ?」
「なっ」

 驚いてる驚いてるー。

「ナルト……お前、知ってたのか!」
「普通にそこらへんでこそこそ行ってる糞ババアがたくさんいるって。丸聞こえなんだから、知らない方がおかしいし」
「そ、それじゃあ! 知ってるか! そこのイルカの両親は、お前の中の九尾に殺されたってのをなあ! イルカも実はお前を憎んでるんだよ!」

 憎んでない。はず、ないじゃないか。
 それぐらいわかってるよ。でもまさか先生の両親を殺したとは思わなかった。それでもイルカ先生は、九尾を気にしないようにして接してくれている先生だ。それを、わざわざ掘り返すなんて!

「俺は、確かに九尾を憎んでる!」

 にくんでる。
 わかっていても、その言葉を実際に聞くとキューッと心をわしづかみにされたように泣きたくなる。

「でも! うずまきナルトは! 俺の! 大事な生徒だァ!」

 今度は違う意味で泣きたくなっちまっただろ、馬鹿!

「流石に封印の書は渡さないってばよ! 多重影分身の術!」

 できるはずもない術。だけど。
 ボフンボフンと音を立てて影分身が出てくる出てくる。術が、できた。体が軽くなってから。九尾と会ってからだ。

「くらえ、クソ野郎!」

 体が軽い。とても軽い。そう。木の上にも簡単に跳べそうだった。というか跳べた。

「なっ、お前、なんで!」

 逃げるミズキにも簡単に追いつける。足の裏にしっかりチャクラが纏えていた。忍者走りができている。オレは今――やっと、忍になれた気がする。

 体全体にチャクラが纏って、

「わかんねえ、よ!」

 影分身全員で蹴って、殴って、突いて、

「くたばれ!」


 結局のことを言えば、暗部の方たちには出番がなかった。っていうかオレがボコボコにした。タマもたくさん蹴った。っていうか二つとも潰した。おそらく不能になるだろう。

 オレ的には他に危惧することもあって憂鬱だ。何故なら急にチャクラを使えるようになったからだ。これではいきなり九尾の警戒レベルが上がって色々言われかねない。爺にはチャクラ一気に練ったらできるようになったと伝えといた。もちろん九尾のことは伏せた。

 喜ぶべきことと言えば、

「あ、あれ、ナルトちゃん? ここ、下忍説明会だよ?」
「ふっひっひっひ。これこれ、これが目に入らぬかヒナタちゃん!」

 思わずニヤけて笑い方が気持ち悪くなったが仕方がないだろう。指差すはおでこ、そこにあるのは――

「ひ、額あて!? 合格したの!?」
「へへへっ」

 3度目の卒業試験で無事合格した、ことですかね!




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