10. My graduation surprise was so bad.
卒業試験で見事課題の分身の術に失敗したオレがいた。一応卒業試験だというのもあって、痛みを我慢しながらやったんですけどねー。失敗した。
合格したみんなをみながらぼんやり遠くから眺める。ここならうっざい噂好きのおばさん達には見つからない。
「やあ、ナルト君」
「あ、ミズキ先生」
「……残念だったね。君は本当に頑張ったと思うよ」
励ましの言葉。この先生が淡々と口から紡ぎ出す言葉は、いつもどこか胡散臭い。この先生は猫をかぶるのがうまい。本心を隠すのがとてもうまいのだ。
「できるものなら、合格したかったんだけどね」
忍になろうとは思わなかったけど、できるものなら。爺だって、オレに期待しているのは確かだった。
「そう、だな。君にとっておきの秘密を教えよう」
ミズキが言ったことをまとめるとこういうことだ。
『火影が持っている封印の書を持ち出し、その書に書いてある術ができるようになれば卒業できる』
えーっと、はい?
……どうやらミズキは馬鹿だったらしい。
どこをどう取っても嘘だとしか思えなかった。こいつ本当に馬鹿だぞ。てか、オレに監視がついてたらどうするつもりなんだろう。
監視はどうやら女の子の日が始まった日を境に外したらしい。困ってあわあわしていたら一瞬の隙にトイレに生理用品が置かれてた。本当に精神的に参った。おまっ、もう子供じゃないんだから!
そんな心の声を感じ取ってくれたのか、次の日に爺に呼ばれて「これからは何かあったらすぐに言いんしゃい」とも言われた。監視解除万歳。
監視がいない今、どうすればいいのだろうか。それは、
「爺ー! 封印の書の術できるようになれば卒業って本当?」
「そんなことあるわけなかろう。確かに封印の書の術ができるやつであれば簡単に忍になれるが、封印の書は見てはいかんから封印の書なんじゃよ。どうしてそんな質問をした」
普通に爺に言ってみた。
「いや、ミズキ先生がそう言ってた!」
「なんじゃと……?」
そうすると爺は考え出した。おそらくは今後の対応だろう。オレのことは信用しているが、ミズキがオレの証言で捕まったとなればミズキ自身が喚くだろうし、ほかの人も然り。
そうなると一番手っ取り早いのは、
「ナルト」
「どうする?」
あ。言い間違えた。どうする、じゃなくて何、にするべきだった。聡い子供なのはわかってもらえているがこれじゃあ本当に行動を先読みしすぎだ。
「ミズキは他に何か?」
「巻物を持って、演習場の近くの森に来いって言ってた」
「……ふむ。ではこの巻物を持ってそこへ向かってくれよう。中を見るかどうかはお主の自由じゃ」
「え、でも、先生はどうすんの」
そう言ったとたん、音もなくオレの隣に二人の暗部が降り立つ。流石に普通の忍者なら気配を察知できるようになった今でも、暗部は無理だ。すっごく驚いた。
「ナルトについて行き、ミズキがナルトから書を奪い次第、捕獲せよ」
「「はっ」」
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