初夢
大好きな人の夢を見た。
温かい手で頭を撫でてくれて、一緒にお絵描きをしてお手玉をして、優しく名前を呼んでくれた。
とてもとても大好きな人。
母上や兄上から虐げられていた私を、いつも庇って守ってくれた清苑兄上。
『おつとめご苦労さまです』
旺季と連れ立って去って行く兄上の後ろ姿。
あの時の自分の言葉がどういう意味を指すのかもわからず、ただ見送るだけの幼い自分。
あの時兄上は、御史台に捕縛され流罪にされたのだと知ったのは随分後のことだった。
二度と会えないと知っていたのなら、黙って見送ることなんてしなかったのに。
あれから十三年。
兄上の夢を見ない日はない。
一緒に遊んでいた時の夢。
一緒に剣稽古をしたり算術を教わる夢。
そして、捕縛され連れて行かれる後ろ姿…。
名前を呼び手を伸ばして必死に引き止めるのに、夢の中の兄上はいつも振り向いてもくれない。
年々、記憶の中の兄上の顔が朧気になって行く。
いつも優しく時に厳しく、そして優雅で美しい自慢の兄上。
このまま会えないのなら忘れてしまえれば楽なのに。
今年も兄上の夢で目が覚めた。
目尻には涙の跡がついている。
顔を拭い溜息を吐くと、劉輝は待機していた女官に声を掛け、朝賀に出るための仕度を始める。
ーーー兄上が戻って来るまで玉座を守るため。
終わる
原作っぽい劉輝。
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