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イタズラ×2

「静蘭、とりっくおあとりーと!」


執務室に入って来た相手を見るや、劉輝は楽しげにそう言った。
言われた相手が驚きながら傍に寄り返事をする。


「主上、何ですか突然」

「静蘭、余にお菓子をくれないとイタズラするぞ?」


霄大師からまた、いつものように余計な入れ知恵をされたのだろう。
兄として弟のこの素直さには少々心配になる。
しかし。


「いいですよ」

「…は?」

「ですから、生憎お菓子を持ち合わせていないので、イタズラしてくださって構わないですよ」


静蘭は劉輝が自分にどんなイタズラを仕掛けるのか見てみたいと思った。
真実、お菓子の持ち合わせもなかったので、甘んじて受け入れると伝える。


「…いや、えーっと…」

「イタズラされないのですか?」


しかし劉輝は目をキョロキョロさせ、焦ったように自分の頬をポリポリとかいて口ごもる。
その様子に静蘭が驚いて尋ねる。


「余が静蘭にイタズラを出来ると思うか…?」


いくら自分は王で静蘭は一側近の立場だとしても、劉輝にとって静蘭は大好きな清苑兄上なのだ。
それに、兄上は怒ると案外コワイのである…。
下手な事をして嫌われてしまったらと思うと劉輝は何も出来なかった。


「では劉輝。私もとりっくおあとりーと」


俯いた劉輝に対して、今度は静蘭が声を掛ける。
しかも名前で呼ばれたので、思わず敬語で返事をする。


「…あ、兄上、私もお菓子なんて持ち合わせていないのです」


顔を上げて左右に首を振る劉輝を静蘭は笑顔で見つめる。


「っイタ、痛い痛い!静蘭痛いぞ!」

「昔は餅みたいに君の頬は柔らかく伸びたのにね」


見つめられて頬に伸ばされた手にドキリとしたのは束の間。
静蘭が劉輝の両頬をムギュッとつまんだ。

驚きと痛みで涙目になって兄の手を叩くとあっさりと離された。
しかし摘まれた頬が痛い。


「頬がヒリヒリするのだ…」


劉輝が赤くなった頬を擦っていると静蘭が頭を撫でて謝って来る。


「…よし、静蘭もお菓子を持っていないのだから余もイタズラを仕返すぞ!」


目をキラリとさせて頬に手を伸ばして来た弟に静蘭は身構えた。
僅かに両頬に親指の当たる感触がした次の瞬間、目の前には目を閉じた劉輝の顔。
そして唇に触れる温かくて柔らかい感触。

一瞬の口付けで離れると、静蘭の表情を見た主上は笑っていた。


「イタズラ成功なのだ!」







おわり


静蘭と劉輝をイチャイチャさせたい一心だった…(笑)
霄大師何者…。

夏前くらいから暫く彩雲国読めるメンタルじゃなくて違う作品に浮気してました。
七夕ネタもわりと精一杯だったんです…。

最近はすっかり復活。
文庫を読んで劉輝を思う静蘭に涙してる。

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