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「…懐かしいな」


劉輝は自室の1つの柱を見て、思わず微笑んだ。








外からの風が気持ちいい。
劉輝は開いた窓から吹き込むその風に、季節が春から初夏へと変わっていくのを感じていた。
少し強く吹いた風により、手にしていた料紙がひらりと飛んでしまった。

慌てて屈み込むと、柱の中腹に高さの異なる2本の横線が削られていた。


「??」


こんな場所に傷なんてあっただろうか。

料紙を拾い上げた劉輝がふと考える。

窓の外からは傍の竹林がサワサワと笹の葉を揺らしてそよいでいるのが聞こえた。


「ああ、」


幼少期、清苑兄上と背くらべをしたのだ。
頭を出したばかりだった筍が、あっという間に自分の背も兄上の背も抜かしていた事に驚いたのだ。


兄上は優しく「竹には節があるから伸びるのが早いんだよ」と説明してくれた後、今度は私の頭を撫でて「今の劉輝はここ」と、柱に印を削った。
そして、兄上の方は抱きかかえてもらいながら自分が柱に印を付けたのを思い出した。



兄上はこの印の事を覚えているだろうか。
静蘭が今夜、訪ねて来た時に聞いてみよう。

劉輝は晴れ渡る青い空を見上げた。








(兄上、これの事は覚えていますか?)

劉輝の室を訪ねてきた静蘭の袖を引き、早速柱の前に連れて行く。

(これは…)

(昔、背くらべした時の印です!)

屈み込んで指さしていた劉輝が嬉しそうに振り向いて笑う。

(覚えてるよ、私は劉輝を抱っこしていたね)

(そうです!)

(…そして、そのまま顔中に口付けてきた事は覚えているのだろうか)

静蘭は当時の事を思い出したが、敢えて口には出さない事にした。

(??、静蘭、久しぶりに背くらべしてみないか)

(構いませんよ)

柱を覗いていた体を伸ばすと劉輝が提案してきたので静蘭も頷く。

(では。…静蘭は…はい、ここなのだ)

劉輝が柱に印を付ける。

(劉輝は随分と身長が伸びたね。今は私より少し大きいくらいだ)

静蘭が劉輝の背丈に印を付けると、自分より僅かに高い位置だった。
あんなに小さかった弟が…そう思うと静蘭から笑みが漏れた。

(兄上…)

劉輝がそのまま、甘えた声で目の前の相手の腕を引く。

(背くらべしたら接吻をするのですよ?)

覚えていたのか…と静蘭は苦笑しつつ、劉輝のお誘いに答える事にした。






終わる


背くらべの童謡に因んだ端午の節句…のつもりでした。
タイトルは「盛り」って打ったら出てきたので。
育ち盛り、盛る劉輝とを合わせて(笑)

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