劉輝のお願い
「あ…兄上!お願いがあるのですっ。私もその、1度で良いので舐めてみたいのです…!」
劉輝の宮に呼ばれたある晩、彼は見るからにモジモジと指を動かしながら、赤らめた顔を俯かせてそう言った。
「……何をですか?」
それを言われた静蘭は、怪訝な顔をして振り向くと静かに弟に尋ねた。
「えっと…その…兄上の、あれです…」
誰に何を言われたのか…。
更に顔を赤くしてゴニョゴニョと口ごもる弟に、静蘭は思わず額を押さえる。
「劉輝、そんな事は言うものではないよ」
至って冷静に言葉をかける。
「なぜですか?兄上は大人になってからだと言っていました」
確かに大人の…ではあると思うが、弟にそんな事を言った覚えがない。
「私の…何を舐めたいんだ、劉輝」
その言葉を良しと受け取った劉輝は表情を明るくして顔を上げた。
「あのですね!兄上が昔、よく口にしていた砂糖菓子です!」
「えっ!?」
「ダメですか?昔は虫歯になるから大人になるまで我慢しなさいと言われました。あれから毎日毎日きちんと齒を磨き、好き嫌いもせずに食事もしました。虫歯が出来た事はありません!」
そう言って得意気にニカッと笑うと真っ白い齒が並ぶ口腔内をこちらに見せる。
「わかりました…口は閉じなさいっ」
自分がいかがわしい行為を連想した事に静蘭は恥ずかしくなり、思わず語尾を強くし顔を背ける。
「静蘭?どうしたのだ。顔が赤いぞ。熱でもあるのか?」
その様子に劉輝は、静蘭の額に手を伸ばす。
「熱はなさそうだな」
離れて行く劉輝の手。
静蘭はその腕を掴むと劉輝の体を抱き寄せる。
「な、あ、兄上!?」
驚く弟の様子に静蘭は笑みを浮かべる。
「他に私にお願いしたい事はないのですか、主上」
「っ!…ズルいのだー!」
そう言いながらも、静蘭の胸に顔をうずめた劉輝の腕は、兄の背中に回される。
「兄上、今夜は朝まで私と一緒に過ごしてくれませんか」
小さな声で顔を赤くし誘ってきた弟に、静蘭は返事の代わりに劉輝の額に口付けたのだった。
おわり。
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途中、呼び方が変わるのは立場的な感じ。
弟だけど、王として臣下を心配する劉輝。
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