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誘惑に負けたのは。

ある晩、劉輝の室で酒を飲み交わしていると数刻も経てば、だんだん劉輝の声音が甘えだし瞼が下りてきていた。


「眠いのですか?」


静蘭がその様子に声を掛けると劉輝は「まだ、眠く…ないの、です…」と言ったそばから肩に寄り掛かりコテンと眠りこけてしまった。


2人で酒を飲むのは今夜が初めての事。
日頃、政務に負われている彼からは愚痴などもなく、劉輝は終始、楽しそうに笑い飲んでいたため、飲み過ぎてしまったらしい。


静蘭は肩に寄り掛かる弟に笑みを浮かべると、起こさないように抱え上げて寝台に運ぶ。


そっと下ろして布団を掛けてやり、離れようとしたら裾を引かれた。

振り向けば劉輝がトロンとした目でこちらを見つめている。


「あにうえ…一緒に寝ましょ?」


見つめてくるその視線に静蘭は僅かに苦笑すると彼の隣に寝転んだ。




静蘭が劉輝の夜着を借りて着替えている間も、彼は嬉しそうに笑っていた。


「あにうえが私の服を着るなんて、不思議な気分です」


酒が回っているため少し舌ったらずに話す。


燭台の灯りを消して一緒の布団に入る。
肩に抱きついてくる相手に愛しさを感じながら静蘭も瞼を閉じた。











「……劉輝…どこを触ってるんですか」


お互いに眠ったはずだったが、しばらくすると隣の人物が身動いだ。
寝返りをするのだろうと気にしないでいたが、相手の手は確信的に静蘭の股を撫で始めた。


静蘭が静かに問うと劉輝が顔を上げた。


「…あにうえ…眠れないのです…」



その表情は先程と変わらず、今にも瞼は降りそうだったが、人の股を撫でていた手で腕を掴むと自分のそこに触れさせた。


「劉輝…飲み過ぎだよ」


今夜は泊まるつもりも、勿論こんなつもりではなかったのだが。


静蘭は向き直ると額に口付けし優しく声を掛ける。


「今夜はしないと言ってあったでしょう?」


「…ですが、あにうえが隣にいると、思ったら…」


生理現象なのだから仕方ないが…。


「兄上、1回だけ…」


つくづく自分は弟に甘い。
劉輝の『1回だけ』が1回で済んだ事などないのに。



静蘭は小さくため息を吐くと頭を撫でてやる。



「仕方のない子だね」


「わ、私はもう、子供じゃないのです」


不満を漏らすその口に静蘭が口付ける。


先程まで飲み交わしていた酒よりも遥かに甘い甘い匂いがした。








終わり。

ついったーのお題より

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