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縁結び

「劉輝、髪の毛に寝癖がついていますよ」


昨夜は久しぶりに室に呼ばれ、2人で朝を迎えた。


倦怠感の残る体を何とか起こして、ようやく着替えを済ませたらしい相手を見ればいつもはサラサラと流れる彼の長い髪の毛がウネウネと広がっていた。


「…静蘭、おはようなのだ…」


「おはようございます、主上。寝癖がついてますよ」


「うむ…」


着替えは済ませたものの、意識はまだ半分ほど夢の中なのか。
着替えた衣類の襟元も緩んでいる。


「主上…きちんと顔を洗われましたか?」


「…まだなのだ…水が冷たくてだな…」


「そのお姿で朝議に出られるおつもりですか?」


「…行きたくないのだー」


肩に寄り掛かり駄々をこねる弟に、静蘭は思わず苦笑する。


「昨夜は、私もあなたに無茶をさせてしまいましたからね」


肩を抱き寄せて額に口付けると、恨めしそうな視線で見上げてくる。


「兄上が一緒に来てくれるなら、頑張ります」


「それは残念ながら出来ません」


正直に断ると拗ねた顔を見せる。


「今日は私の結い紐を貸して差し上げます。私が傍にいると思って頑張って来てください」


「…兄上…」


後ろを向かせて椅子に座らせると、彼の長い髪の毛を櫛ってやる。


「劉輝、今日も1日頑張って来てください」


「…はい」


寝癖が直った髪の毛を一束手に取ると、後頭部で自分の結い紐を使い括ってやる。


「はい、出来ましたよ。こちらを向いてください」


今度は自分の方に向き直させて向かい合う。


濡らした布で顔を拭いてやり、前髪も梳かして。
緩んでいた衣類の襟元を引き寄せると口付ける。


「お守り付きですから、しっかり行ってらっしゃい」


衣類を整えて、笑顔を向けると劉輝は赤面していた。


「静蘭、ズルいのだ…そんな事をされたら仕事にならないぞ…」


「私もこれから仕事に行かねばならないのです」


お望みなら今晩またお邪魔します、と続いた言葉に劉輝は赤い顔のまま、その場で固まった。
そんな弟の反応に、静蘭はイタズラっぽく笑うと室をあとにしたのだった。





「あ、あに…いや静蘭!」

「何ですか主上」

「また…文を出します」


小走りで追いかけて来た主上の体をさり気なく支えると、隣からそんな可愛いらしい言葉が聞こえた。

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