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続・悩み
元ネタ(?)は、小ネタにあります。
「静蘭!ちょっと待ってくれよ」
回廊を歩いていると後ろから名前を呼ばれた。
呼ばれた当人は一瞬足を止めて振り返ったが、相手を見るとそそくさと歩き始めた。
「人が呼んでるのに、なぜ君は止まってくれないんだ」
「止まったじゃないですか。私はあなたに用事がないから歩き出しただけです」
追い付いた相手ーー楸瑛が不満を漏らせば、さも当然のように歩きながら答える静蘭。
「…君にはなくても私は聞きたい事があるんだ。近頃、主上の様子がヘンなんだけど、君は何か知ってる?」
隣を歩きながら、ため息の後に尋ねられたのは国王であり、静蘭にとって弟の劉輝の事。
先程まで執務室で顔を合わせていた時も特段変わったようには見えなかったが…。
そう答えると楸瑛は驚いたような返事をする。
「え?あれでおかしくないと思うのかい?」
バカにされたような言葉に静蘭は足を止めて相手に向き直った。
「どういう意味ですか?」
「だって主上は、君がいると目を潤ませて顔を赤らめているんだよ?」
「ああ…」
楸瑛の言いたい事を理解した静蘭は納得する。
それは昨夜も交わしたやり取り。
その反応に興味を持った楸瑛が意味有りげに笑った。
「兄上…ですか」
その言葉に静蘭が目を見開く。
静蘭が実は流罪にされた第ニ公子である事は楸瑛も知っている。
そして、二人が今は兄弟愛ではない感情で心も体も繋がっている事も。
「私も呼ばれてみたいですねえ」
自分の顎に手を当て、面白そうに彼が言わんとしている事を理解した静蘭は表情を険しくした。
「あなたにも龍蓮殿と十三姫様がいるでしょう?」
「あいにくだけど、私には弟や妹を抱く趣味はないよ」
「私も、趣味で劉輝を愛してるわけではありません!劉輝は誰にも渡しません!」
仕事に支障の出かねない劉輝ののぼせ具合に、冷やかすつもりで静蘭に声を掛けたのだが、あらぬ誤解をされた上、真顔でそう言われると楸瑛は返事が出来なかった。
相手の気迫に圧され呆気に取られているうちに気付けば静蘭の姿は見えなくなっていた。
以後、静蘭と楸瑛の間には真冬の冷気の中、稲光が走るとか走らないとか。
ーーーー
「兄上?先日から楸瑛と喧嘩でもしているのですか?」
「劉輝。絶対、一人で藍将軍に近寄ってはダメだよ」
終わる
小ネタに載せた紫兄弟の続き。
楸→劉ではない。
単純に、相手から行為中に兄上って呼ばれるのってそんなにいいの?みたいな、ちょっとだいぶ変態じみてる感じ。
藍将軍以前に私の脳内の話ですが。
呼び方や話し方がいまいち曖昧…。
そして、これはいつの時間軸にいるのだろうね。
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