あなたの手と私
「静蘭」
「何ですか、主上」
2人でいると、彼は私の手をよく握る。
今日も目の前に座る私の腕を引くと指を開いたり手を裏返してみたりして遊んでいる。
「そなたの指はいつもすべすべしていて気持ちが良いな」
「そうですか?主上の手もツルツルしていておキレイですよ?」
静蘭が劉輝の手を握り返し、手首を捻りながら答える。
「うむ、寒くなると乾燥して静電気がひどくてだな。痛いと珠翠に話したら髪に付ける椿油がいいと教えてくれたのだ」
公子だった幼い頃。
剣の稽古でまめが出来、冬はあかぎれで手や指先が切れて自分も悩んだ頃に同じように教わった事がある。
流罪にされてからは、手指の傷など比べ物にならないような生活だったが、邵可様達と出会ってからは奥様が同じように手当てをしてくれていた。
「私は、幼い頃から静蘭の…清苑兄上の手が好きなのです。いつも私の頭を撫でて、守ってくれた優しい手」
劉輝の言葉に一瞬表情が陰ったのは、あの奈落の頃があるからだ…。
自分を守るために何人もの人間を殺し、血に汚れたあの頃。
それでも、どんなに汚れても自分を守り生き抜いて、もう1度会いたかったのは、この手に抱き締めてやりたかったのは、今目の前で首を傾げる愛しい弟。
「…どうしたのだ?なぜ、そんな顔をするのだ」
主上の手がこちらに伸ばされ、涙の流れた頬を親指で拭われた。
「余は何か、悪い事を言ってしまったか?」
拭ったまま不安そうに頬に触れていた彼の手を握る。
「いいえ、私はね…君に…劉輝と再び会えた事を幸せに思ったんだよ」
そう言って微笑むと、彼の瞳も少し揺らいだのだった。
終わる
もっとアホなテンションで考えたはずなのに、シリアス風になりました。
2/1追記。
なんという事でしょう…!って驚く内容のドラマCDがあった事を知りました。
劉輝が兄の手ラブを公言していて可愛いです。
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