2人の時間
静蘭は私の髪の毛を触るのが好きだと思う。
「主上、今日も髪の毛がサラサラに整えられていますね」
椅子に座っていると肩に手を掛け、背後でそう言いながら今日も指先につまんだ毛束がサラリと流される感覚がした。
「そうか?余は静蘭のふわふわとした髪の毛が好きだぞ?」
振り向いて告げると静蘭の手から離れた毛先が、振り向いた反動でなびいた。
後ろにいた彼をそのまま見上げると「ありがとうございます」と優しく微笑む。
すると彼は幼かった頃のように頭をポンポンと撫でた。
懐かしさに劉輝も表情がゆるむ。
静蘭の手が劉輝の両頬に伸びると、自然と近付くお互いの顔。
劉輝が静かに瞼を下ろす。
静蘭が劉輝の左頬に垂れていた髪を彼の耳に掛けてやる。
「…まだですか?」
「まだですよ」
口付けされると目を閉じたが、なかなかその気配が近寄らない。
劉輝は恥ずかしくて瞳を開けられなかった。
そんな様子を知っていて、静蘭は頬を撫でたり髪の毛を触ったり。
「…静蘭、まだか?」
「主上…我慢」
「…あに、うえ…早くしてください」
「何をですか?」
口付けを待てずに頬を赤らめてねだる弟が愛しい。
「わかっておるのだろう?」
目を閉じたまま、むーと唇を付きだす彼は本当に国王なのだろうか。
静蘭は無意識にねだる劉輝の表情を見るのが1番好きだった。
「…静蘭、余はもう待てないぞ。目を開けるぞ?」
焦らせ過ぎたのか少し機嫌を損ねてきている。
劉輝の睫毛が僅かに揺れたのがわかる。
「劉輝…」
先程髪を掛けてやった左耳に名前を囁くと肩を跳ねさせて驚いた顔でこちらを向いた。
「っ?!」
その隙に彼が待っていた口付けを送る。
一瞬で離れると彼は寂しそうな顔をする。
「せえらん…もっと…」
甘えて名前を呼ぶ弟に笑顔を向けた。
「仰せのままに」
終わり
最初に浮かんだのと違う方向に進んだけど、まあいっか。
たまには甘い雰囲気にしてみたかった。
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