完
数ヶ月後−−−
『清苑様、ご機嫌いかがですか?私は先日、田舎に到着いたしました』
「兄上、まもなく朝議の時間になりますよ」
「今行く」
『父はすっかり元気です。私がいなくなった事で臥せて寝込んでいたようなので、戻って来た事をむしろ喜ばれています。私達の離縁については、慣れない後宮生活に心身共に疲れてしまったための療養と伝えてあります。馬車の費用や手切れ金などはお気持ちだけで結構です。』
「義姉上からの文が届いたのですか。お父上の容態はいかがなのでしょう…」
朝議に向かう回廊。
劉輝は心底、心配そうな表情をしている。
「元気になられたと書いてあった」
「そうですか!それは良かったです」
素直に笑顔で喜ぶ劉輝の頭を撫でてやろうと、伸ばした手を清苑は引っ込めた。
「兄上…?」
『短い間でしたが、お慕いしていた清苑様の妻になれた事、とても幸せでした。』
立ち止まり、その手で自分の顔を覆ってしまった兄に劉輝は心配になり近寄る。
「兄上、どうされたのですか?」
『どうぞ、劉輝様と末永くお幸せにお過ごしくださいね。』
「劉輝…すまない…」
「何ですか?」
『追伸、お2人の関係は後宮では皆知っていて、黙認となっていたようです。下手に隠すより早くから公にしてしまえば良かったですね。』
「…今日の朝議で君との関係を公表する」
「え?!突然…どうされたのですか」
「以前から知れ渡っていたらしい…」
『追伸の追伸、劉輝様の艶やかな声は響きますから…愛しいのはわかりますが、無理をさせず、時々労って差し上げてくださいね』
妃からの追伸の追伸なんて、とても劉輝には伝えられない。
兄のまさかの言葉に劉輝は顔を赤くしたり青くしたり。
「し、知られていたなんて…なぜ、ですか、誰にですか?」
君の可愛く啼く声が聞こえるとは言えたものではない…。
「劉輝が、可愛いからだよ」
慌てている弟の頭を引き寄せると、清苑はその場で口付けた。
「あ、あ…兄上!ダメですっ」
「皆が知っているのなら、もう隠す必要はないのだろう?」
清苑はニヤリと笑うと劉輝を抱き締める。
劉輝は嬉しさで涙腺が弛んだ。それを隠すように清苑の肩に更に顔をうずめる。
2人で幸せを噛み締めていると臣下が遠くから呼んでいる声が聞こえてきた。
急いで体を離すが見つめ合うと笑みが溢れ、手を繋いだまま走り出したのだった。
−−−−−
「今まで黙ってきたが、私と末弟の劉輝は、愛し合っている」
「兄上、そんな唐突に!」
(何を今更)
「よって私達は以降、妻は娶らない事とする」
(何を今更…)
「これに異議のある者は?」
「…主上、異議はありませんが…その……夜な夜な声が聞こえるとの噂が以前からありますので………少々自制なさってくださいませ…」
「……承知した」
(あの、あ、兄上?!声ってもしや、)
(すまない、劉輝…)
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