トリトリ/かづきさんへ
「丸井くん、これっ」
「おー、サンキュー」
朝から何度目だろうか、この光景を見るのは。
そう思うとため息が漏れる。
「なーに溜め息なんて吐いてんだよ仁王」
昼休みになり、廊下を歩いてる途中に女子から受け取ったお菓子を、弁当より先に頬張り始めたブン太がそう言った。
「…お前さんはホンマ子ブ太さんじゃのぅ」
「…はあ?」
「何でもかんでも食いよるし丸々してからに」
「うっせ、痩せたっつったろ!嫌味かコノヤロウ」
ハロウィンは、俺にとってバレンタイン、誕生日、クリスマスに並ぶ4大天敵イベントだ。
と言うのも、知っての通りブン太は甘い物に限らず食べる事が好きな為、こういったイベントになると必ず大量のプレゼントを渡される。
その度に呼び出されたり、声をかけられたりする為、必然的に一緒に過ごす時間は短くなってしまう。
しかも、愛想の良い笑顔を振りまくのも気に入らない。
更に食べ始めると、その味や店の感想やら、そんな食通ならではの話を始めるものだから何とも相槌が打ちにくい。
そう思うとつい、ブン太をからかってやりたくなって、頬をつつきながら皮肉がこぼれた。
「じゃあ俺も」
「何だよ」
「トリックオアトリート?」
そろそろ構ってくれんと、イタズラするぜよ?
その意味を込めてつついていた手で頬に触れると、意味を理解したのか顔を赤らめてこちらを見てくる。
「…トリートっつっても、お前菓子嫌いじゃん」
「おん。だから、トリックオアトリート?」
誤魔化そうとするブン太に再度同じ質問をする。
「……サンタさんはいい子のとこにしか来ないんだぜ?トリートも、ちゃんとしてないとトリックなんだよ」
頬に触れていた手を下ろされたが気にしない。
「…つまりはこの焦らしはトリートなんやね」
「さあ?……仁王、トリックオアトリート!」
「しゃーないのぅ…」
一瞬視線を逸らしたものの、自分からそんな事を言いだす照れ屋なブン太にしてやられた気がする。
「…まあ、ちゃんと出来ん子にはトリックでええんよね?」
さっきのブン太の言葉をそのまま返すと「しまった」と言うような顔をした。
「ブン太、トリック・アンドトリート?」
意味をわかるようにゆっくりと発して。
人通りがない踊り場なのを良い事に、甘い香りのする唇に親指を添える。
「…トリートアンドトリート」
その言葉に笑うと、更に顔を赤くしたブン太に最高のおもてなしを込めて顔を寄せた。
おわり
遅くなりました〜…;
かづきさん、お誕生日おめでとうございました!
何だかんだと色々お世話になってます(^^;
こんな感じのニオブンですが、宜しければ貰ってくださいませm(__)m
かづきさんにとって良い年になりますように。
かづきさんのみお持ち帰り可です。
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