鳴かぬなら鳴きたくさせようホトトギス〜2014真田誕生日〜
真田と言う男は、昭和で言うカミナリ親父と呼ばれるようないわゆる頑固者だと思う。
とにかく弱音は吐かず、自分に厳しいが他人にも厳しい。
そして意地っ張りで見栄っぱりだ。
素直に喜ぶ姿もほとんど見た事がない気がする。
「…何がええんかのぅ」
仁王は、誕生日が近付いたそんな恋人へのプレゼントに頭を悩ませていた。
「さーなだ」
「仁王か、どうした」
部活の休憩中、ベンチに腰掛けた真田に声をかけた。
「んにゃ、今日も暑いけんの、しっかり水分補給せんといかんよ」
言って隣に腰掛けながらタオルとペットボトルを渡せば、「ああ、すまない」と受け取ったタオルで汗を拭うとペットボトルを手にした。
そしてキャップを開け飲み下す様子を見ていれば視線に気付いたのか不審気な顔をする。
「…何だ、何か変な物でも入ってるのかこれは」
「アホ言うな!失礼な奴じゃの」
まったく、人を何だと思っているんだ。
そう素直に態度に出せば「仁王の事だからいまいち信用ならん」と言葉を返されてしまった。
…人の好意を仇で返さなくてもいいだろう。
「そんな事より、次はお前の試合だろう。早くコートに入らんか」
さり気なく欲しい物でも聞き出したかったのだが、難なく失敗。
そうでなくとも、2人で居られる時間を呆気なく断ち切った相手に落ち込んだままの状態で試合に臨めば散々な結果で。
終わった直後に怒鳴られた事さえ嬉しいと思った自分は末期だ。
「ははっ、まあお前じゃ仕方ねえって」
対戦相手だった丸井はそう笑う。
「仕方ないってひどいのぅ…ちゃんと自販で買ったポカリ渡したんに」
「なんつうか、仁王が気を回す時点で裏がありそう」
「…」
真田もそう思ってるのか。
可愛い恋人を。
「まあ、お前が贈りたい物でいいんじゃね?」
「おん」
仁王は、丸井のアドバイスを受けて再び考え始めた。
「真田〜ちょっとすまん」
仁王が真田をそう呼んだのは翌日の部活終了後。
部室では皆着替えていて、ガヤガヤとしていた。
「どうした」
それでもロッカーが近い為か仁王の呼び掛けに振り向いた真田は、視界に飛び込んで来た仁王の姿に呆れた声を出した。
「そんな格好では風邪をひくぞ。下にシャツを着るよう言ってるだろう」
仁王はハーフパンツはそのままだが上半身はポロシャツを脱ぎ、首にタオルをかけた姿だった。
「シャツなんざ、余計に汗かいて適わんぜよ…ところでな、」
話ながら脇や首を制汗シートで拭く姿はとても色気がある。
そして拭き終えると真田の隣に立ち、肩に腕を回すとヒソヒソ話をするように真田の耳に囁いた。
「俺、ええ匂いするじゃろ?」
言われて鼻をスンと嗅げば、先程の制汗剤らしき爽やかな香り。
「そうだな」
「何か思わん?」
「何かとは何だ」
「……例えば」
真田の手を取ると素肌の自分の胸に触れさせた。
「ドキドキしたり?」
そうしてここぞとばかりに妖艶に笑いかける。
真田の視線は仁王の胸に釘づけだ。
「…そうだな…」
「っ!」
そして真田の返事に喜んだ仁王の胸は一瞬とても高鳴った。
「お前はもう少し胸筋を鍛えた方がいいな。それから、この肩にかけての筋力アップをした方が」
しかし仁王の思惑ではない返事に腹を立てると、ペタペタ触る手を振りほどきさっさと着替えを再開させた。
「何だ」
「知らんっ真田のアホ!」
慌てた様子で咎めてきた相手に振り向く事はせずに背中を向ける。
「仁王、」
「ふんっ」
相も変わらずガヤガヤしている部室では、2人の様子に特別気付く者はいない。
「こっちを向け」
意地を張る仁王に呆れた真田が肩を掴んで振り向かせて。
「向か、ん」
「…目のやり場に困るのだ」
そうして仁王のワイシャツを引くとボタンを留めていく。
その顔は少し赤くなっていて、仁王は思わず自分の口角が上がるのを感じた。
「…真田のにぶちんめ」
「真田、祝うん遅くなってすまん。誕生日おめでとさん。プレゼントはお・れ☆どうじゃ〜嬉しかろ?」
誕生日当日の放課後。
部室では、部誌を書く真田と着替え途中の仁王の2人しか残っていない。
先日の言動に脈ありと見た仁王は誕生日に自分がプレゼントになる事にした。
「…そのネクタイの結び方は何だ!そしてシャツを着ろと言っただろう」
声をかけた仁王の姿は着替えは済んでいるがワイシャツのボタンを途中まで外し、襟元にはネクタイがリボン結びされていた。
「シャツなんざ着たら真田に触ってもらえんもん」
「何の事だ」
と言うのも、今までにキスすらして来ない真田に仁王が焦れたのだ。
「こういう事…」
そして真田をロッカーに追いやると唇を塞ぐ。
目を見開く真田を余所に仁王は瞼を閉じて真田の唇を堪能する。
鼻から抜ける吐息に熱が高まり、舌を絡ませると真田のネクタイに手をかけた。
「仁王っ、」
ボタンを全て外され、ようやく解放された頃には真田も当然この行動の意味を理解していて。
「真田…」
切なげに名前を呼ぶ相手に視線が合わせられずに俯くと、目に入るのは先日自分が手を這わせた仁王の素肌。
慌てて顔を背けると仁王が笑った。
「やましい気持ちがないなら裸でも目のやり場に困って困る事はないじゃろ?」
「…っ」
「な?」
自分の言葉を皮肉のように言いながら、またも真田の手を掴むと今度は開いた襟から自分の胸の突起に触れさせた。
「…んっ、摘んで?コリコリされるん、気持ちええ…真田の事思うとな、こうなるんじゃ」
「仁王…っ」
そして艶めかし気に微笑む仁王に、真田の理性が切れるまであと少し。
おわり
祝ってるんですかね、これ…。
真仁はどうも襲い受けな仁王くんが好きなのです…。
と考えてたら仁王くん若干迷走。
去年ので真←仁←丸の別話でもちょっと考えてたら丸井くんが出張ってきたのでした。
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