※3ヶ月と1日の話。〜2014幸村誕生日〜

「仁王は誕生日プレゼントに何くれるの?」


まだまだ冬の寒さが残る中、日射しは暖かく春めいてきているな、と実感した卒業も間近な2月の終わり。


「…えっ、…とな」


「うん」


「いや、ほら当日まで楽しみにしとき」


「えー」


恐らくプレゼントの事まで考えていなかったのだろう仁王は、俺からの質問にピクリと肩を震わせて言い繕う。

部活も引退し、放課後は屋上庭園を眺めた後帰宅するのがすっかり習慣になっている。
今も屋上からの階段を降りて下駄箱に向かう途中だ。


「…何か欲しいもんでも?」


「そうだなあ。仁王の誕生日プレゼントのお返しがいいかな」


立ち止まり考える素振りを見せた後にそう言うと、数段下で俺の様子を見ていた仁王の顔が引きつった。


「うん、そうだよ。バレンタインのお返しがホワイトデーなんだから誕生日のお返しはやっぱり誕生日だと思わない?」


踊り場に着くと仁王の引きつる頬に触れて距離を縮める。


「だから、楽しみにしてるよ?」


にこりと笑ってそう言うと仁王の唇にキスをした。













―――――








あれは3ヶ月前。
俺の誕生日の事だった。

翌日も学校のため泊まる事はなかったが、プレゼントと言われて幸村から渡された物を見た時は我が目を疑った。

直接渡されたのに帰ったら開けろと言うから不思議に思っていたがまさかプレゼントとして貰う日が来るとは…。


呆れながらも連絡しようと携帯を手にする。


と、ちょうど本人から着信を知らせた。



「プレゼント見た?」

「…見た」

「そんなに喜ぶとは思わなかったな」

「呆れとるわアホ」

「実は俺、クリスマスを一緒に過ごせそうにないんだ」

「は?」

「ほら、妹も小学校卒業だから冬休み中に家族で旅行に行く事になったんだ」

「…」

「だからクリスマスを2人で過ごせないお詫びに誕生日プレゼントはあれにしたんだ」

「悪趣味じゃの…」

「まあ使っても使わなくてもいいけど。ホントは冗談のつもりたし」

「…お前の冗談は分かりにくいぜよ」

「そうかな。何はともあれ、誕生日おめでとう」

「おん」

「それじゃ、また明日」

「ん」






誕生日にそんな会話をした事を思い出し、自分の彼氏(不本意にも)ながら性格が悪いと改めて思う。
一緒に過ごせないからとわざわざ自分で慰められるようにと所謂大人の玩具を寄越したのだ。
…いや、実際使ったとは言えんけども。



そして今日のあの要望。
あれは最初からこれが目的で俺の誕生日に渡したに違いない。


「…ホント、性悪じゃアイツ…」



ベッドの上で、あの日幸村からプレゼントされた物を眺めて呟いた後、一つの案が頭を過った。








―――――







「何?」


卒業式も近いため授業は昼で終わる。
幸村を俺の家へと連れてきて誕生日を祝う事にした。


「誕生日プレゼント」


「開けていい?」


「…どうぞ」


部屋に通し、しばしゆったりしたところで小包を渡した。


ああ言ったからか何となく期待溢れる様子で包みを開けていく幸村に、内心ため息がこぼれる。


(涼しい顔してとんだ変態じゃ…)


「…ん?」


包みを開いた幸村が怪訝そうな声を出した。


「お返し欲しかったんじゃろ?」


「…そう言ったけどさー」


悩んだ末、何を選んだかと言うと俺が貰ったのとまったく同じ物。


「俺は仁王と違って自分で慰める必要ないし」


驚いている幸村にニヤニヤしていると、思いもしなかった言葉に俺が驚いた。


「…何じゃ俺以外にも相手おるんか」


「嫉妬?」


悔しさを堪えながら反論すると幸村は楽しそうに笑った。


「…」


「違うよ、俺は仁王が好きだし仁王以外に興味ない」


黙り込んだ俺に機嫌を損ねたと判断したのか優しく抱き締められた。


「…ただ、俺は仁王と違ってココは使わないって話」


抱き締められていたかと思えば囁きながら押し倒され、制服の上から尻を撫でられた。


「っん、」


「せっかくだからコレ、使おうか」


「なっ、やじゃ…」


反論する言葉はキスで塞がれた。


「…ね、使ったの?あれ」


「使わんっ」


顔や首筋にキスを繰り返しながら、そんな事を言う。

「そう…」


素直に答えようものなら何を言われるやら。







制服を脱がされた頃には既に限界も近く、改めてこいつは性格が悪いと思う。
散々焦らすように撫でられて、もどかしくて仕方がない。


「あっ、ああ…」

ようやく直接握られて数回擦られただけで達してしまった。

「早かったね」

ふふ、と笑う幸村は変わらず制服を着たままで。
こちらはすべてを晒していると言うのに。


「……」


「仁王?」


こいつの余裕を崩してやりたい。
無言で起き上がった俺を不思議そうに呼ぶ幸村を尻目に、さっきまで話題に上がっていた玩具を手に取り、座り直すと既に濡れている自分の穴にあてがった。


「っんぅ…」


「…っ、」


幸村は一瞬驚いた顔をしたものの、何も言わずにその様子を見つめてくる。


「っは、…ああ」


電源を入れれば、ひんやりとした振動が再び熱を高めていった。


「…ゆきむら、」


小振りなそれの刺激に、俺の熱は物足りなさを感じて、目の前にいる相手の名前を呼ぶ。
幸村に抱き締められて、幸村に触れられて、幸村の熱を感じたい。

しかし幸村は何も言わない。
でも表情にはさっきまでの余裕なんてなさそうで俺は嬉しくなった。


「…そうやって過ごしてくれたんだ、クリスマス」


静かに言われた言葉に玩具を押さえる手が止まる。


「…は?」


「これね、こうやって使うんだよ」


「え、ッン、ちょ…、」


突然玩具を掴んだかと思うと更に内部に押し込められ、弱い部分を刺激する。。

「っんあ」


「これね、男性用のおもちゃなんだ。…だから、お前の好きなところもちゃんと突いてあげれるよ」


「ああっ、…や、」


楽しそうに笑う幸村は的確に俺の中を刺激する。
どうりで以前使用した時はなかなか刺激が足りずもどかしい思いをしたのか。


「や、ちょ…幸村っ、」


「ん?」


「あ、も…や」


気持ちはいいが幸村を感じたい。
幸村の誕生日なのに、これじゃ何も祝ってない。


「っはぁ…誕生日なんに、幸村が、気持ち良くならんで、ええんか…」


バイブを握る幸村の手を押さえてそう言うと、幸村が顔を逸らした。


「……仁王のバカ」


「は?…っあん」


暴言と共にバイブが抜かれると、いつもより硬く熱い幸村の自身があてがわれた。


「自分からプレゼントになるなんて、…本当可愛いな」













その言葉の如く、幸村へのプレゼントとして何度達したかは記憶にない。


「…まさか仁王があんな祝い方してくれるなんて思わなかったよ」


「…いや、ちゃうし。プレゼントは俺じゃなくあのおも「冗談のつもりで贈ったプレゼントに本気でお返ししてくれるんだもん」」


遮る言葉に返事が詰まる。


「…それにクリスマスに寂しい思いさせてごめん」


実際、クリスマスの夜は会えない寂しさを紛らわすようにプレゼントされた物で慰めては燻った夜を過ごした。
しかしどうして、使った事に気付かれたのか。


「買う時に見なかった?男性用って」

俺が使わない事わかりきってるじゃない、そう笑う幸村に改めて情けなさと性格の悪さと感じた。


それに気づいてないのかも知れないけど、物足りない時のお前って指くわえるんだよ。


これは俺しか知らなくていいい事だけどね。








おわり



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ゆっきー誕生日おめでとうー!

珍しく入院していないお誕生日。

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