霜柱〜新春お年玉企画〜

ザクザク


ブン太が地面を踏みしめて歩くと、土の下に出来た霜柱が音を立てる。


「珍しいのぅ」

「お前がこの時間に起きてるのも珍しいけどな」

「起こしたんブン太じゃろ」

「だって仁王と初日の出見たかったんだから仕方ねえだろぃ」


この年末年始、両親と弟は父親の実家で過ごす為既に帰省している。
姉も仕事納めのタイミングが合わず残ると言うので、それならば俺もテニス部で集まるからと遠慮した。
しかし実際には、姉貴には彼氏と過ごす予定があったらしく、早々とお年玉を寄越すと大晦日には帰って来ないからと荷物を持って出掛けて行った。


家にひとりになり、クリスマスも過ぎた年末のテレビはどこも特番ばかりでつまらない。
寂しいわけではないがついそんな事をブン太に電話していた。


「ならオレは仁王と一緒に年越ししたい」


そう言って、姉貴よりは幾分か小振りな荷物を持って泊まりに来たのは昨日の事。


新年を迎えると共にキスをされて、お互いに気分が盛り上がってしまったのは自分でも認めよう。
結局ふたりして寝たのは3時頃にも関わらず、朝方身体を揺すられて目を覚ませばまだ6時半。

しかし起こした当の本人は既に着替えも済ませて「出掛けるぜ」と新年早々朝っぱらから何とも自分勝手な事を言い出したのだった。


眠さと気怠さとで行き先も聞かずに出て来てみれば冒頭のやり取りに繋がる。


「あ、明るくなってきた」


海岸に着けば同じように日の出を待つ人々が既に多く集まっていた。


「きれいやね」

「だろぃ?だから仁王と見たかったんだ」


得意気に笑うブン太の顔を新年最初の太陽が照らしていて胸がキュンとした。
今年もこの太陽みたいなこいつに惹き付けられてる1年が始まる。






おわり

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