見えた気持ち

目を覚ましたそこは部室のベンチの上だった。


起き上がろうとした時に自分に掛けられていた何かがパサリと落ちる。

身体中至るところが痛む中、なんとか手を伸ばしそれを拾い上げた。



『幸村精市』



ジャージの内側に書かれたその名前に心臓がドクリとした。







この身体中の痛みも心が痛むのも全て、こいつのせいだ。







「…強姦はあかんのぅ部長さん…」


幸村が自分に好意を寄せていたのは予期しない事だった。
部室を去る直前に聞こえた告白は眠った振りをして聞こえていない事にした。



だから、あの時引き金になっただろう一言もまったくの本心。





「…、…からかいたかっただけにしちゃ質悪いぜよ」


あの時幸村は『好きな子には興奮する』と言った。
そしてあの行為に流れた。


視覚を奪われた時点で逃げ出せる気もなく、されるがままに受けるしか出来なかった。


それでも、無理やり襲うなら端からただ乱暴に犯せばいいものを。


気を失ったところで想いを告げるなんて卑怯だろう。





行為の最中、嫌悪感や痛みは段々和らぎ、徐々に快感になって行ったのは自分の身体がよく知っている。


意識を手放す直前、奪われていた視覚が戻った事で、幸村に犯されている事実を言葉の通り目の当たりにした。
…それはとてつもない快感として伝わった。
額に汗を浮かべて、切なげに見つめる視線にその快感は強くなった。



まさか自分が、気持ちが良すぎて気を失うとは。
今までに抱いた彼女達にも何人かいたが、自分がまさか体感するなんて。
しかも男に犯された状況で。



「…俺、M男だったんか」


思いもしなかった自分の性癖に顔を抱える。


「口が裂けても言えんぜよ…」



誰でもいいわけじゃない。
幸村のあの表情がまた見たいと、そう思ってしまった。
途端に疼いたそこにため息を漏らすと、怠い身体を立ち上がらせてロッカーに向かった。





おわり









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