Second Love〜2013ジャッカル誕生日〜

「じゃあ、行ってきます」

「はい、いってらっしゃい。今日はケーキ買ってくるわよ」


母親の見送りに手を振り玄関を出る。


俺は今日13歳になった。
しかし11月3日と言うのが、日本では文化の日と制定された所謂祝日だと言う事をブラジルにいた頃は思いもしなかった。


その為、移住して来て以来、友人達から当日に祝われる事がなく淋しく感じていた小学生時代。








「よお、ジャッカル!お前今日誕生日だっけ?おめでとー」


しかし中学に入れば、休みだろうと部活がある。


「おおブン太。サンキュー」


部室に着くと、小学校から知り合いであるブン太が挨拶早々その話題を出した。


「いいなー今日ケーキ食うんだろぃ?オレも行って良い?」


「俺の分を食いにだろ?」


「おう」


「お前なあ…主役からメイン奪うなよ」


「ジョーダンだよ」なんて笑うブン太の後ろに銀髪を見つけて胸が高鳴る。


「ジャッカルは今日誕生日なのか」


そう言ったのはやはり近くにいた幸村で。


「知ってたら色々用意したのに。みずくさいなぁ。まあ俺は3月だけど、みんな気を遣わなくて良いから」


「オレ4月だからー期待してるぜジャッカル」


幸村に便乗して来年の誕生日をせがむブン太を流しながら銀髪を探す。


「っ!仁王、おはよ」


「おはようさん」


支度をしていた仁王と視線がぶつかり慌てて挨拶をすれば、いつもの様子で返事がされた。


「なーなー、仁王は誕生日いつ?」


「ん?さあ、いつだったかのぅ…」


ブン太の言葉にドキリとしたのは一瞬で、仁王はそう言うと部室を出て行ってしまった。


「何だよ、ボケ老人かっつうの!オレもう、本当仁王苦手」


イライラした様子のブン太は、入学式にパッチンガムに引っ掛けられて以来、からかわれたり誤魔化される度に仁王とは反りが合わないとよくぼやく。
俺はと言うと、入学式に見たその時の笑顔に惹かれてしまって以来、片想いを燻らせているのだから苦笑を漏らすしか出来なかった。






「お疲れさん」


「っおう、サンキュ」


片付けをしていると、仁王が話し掛けてきた。


「誕生日プレゼントが基礎練3倍なんざ酷やったのぅ」


「ははっ、まあ幸村らしいんじゃねえかな」


何も用意していないと言う事で、幸村からの誕生日プレゼントは俺だけスパルタ練習となったのだった。


「これやる」


「ん?」


「俺も何もないけん、ゲーセンの景品で悪いんやけど」


そう言った仁王が拳を出すから、手の平を差し出すと飴玉がいくつか落とされた。


「!!あ、ありがとう」


「ん」


「仁王は、いつなんだよ誕生日」


あの笑顔を向けられてドキドキしながら尋ねる。


「来月。12月4日」


「来月か。何かお返しするからよ、欲しいもんあったら言えよ」


「いらんって別に。それよか、あっちからブタさんが向かってくるぜよ」


仁王が指差す方を見ればブン太が走ってくるのが見える。


「またんな事言って…聞こえてたら殴られるぜ?」


「ジャッカルが、じゃろ?」


「まったくだ」


「ホンマ、お前さんら仲ええのぅ」


「小学校一緒だったからなあ」


「ふーん…じゃあの」


納得したのか仁王はそのまま手をヒラヒラさせると去っていってしまった。


残念に思いながら見送るが、握った拳に残る飴玉を感じると嬉しくなる。


「ジャッカルー!って何お前顔キモッ」


そして近くに来たブン太にそう頭を叩かれるまで自分の顔が緩んでいたとは思いもしなかった。






おわり

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