可愛い魔法使い〜2013ハロウィン〜

「仁王くん、トリックオアトリート!」


「んー?はいよ、飴ならあるぜよ」




朝から何度目だろうか、この光景を見るのは。
そう思うとつい溜め息が漏れた。



「どうしたんブンちゃん、溜め息なんか吐いて」


「べっつにー」


昼休みになり、教室から屋上に向かう途中だけで仁王は数人の女子から声を掛けられた。


ハロウィンはオレにとって、バレンタイン、エイプリルフール、誕生日、クリスマスに並ぶ天敵イベントなのだ。


と言うのも、知っての通り仁王はイタズラや人を騙す事を楽しむ為、そんなコイツに弄ばれたい女子達が寄って集って群がるのだ。

エイプリルフールに部活なんざあろうものなら、春休みにも関わらずコートの周りにはギャラリーが多い。


クリスマスやバレンタインは甘いものが苦手と公言するだけあって本命からの呼び出し以外は少ないが。



それでも、そんな女子達に愛想良く笑ったり、時にはパッチンガムを引っ掛けたり。
面白いわけがないだろう。



屋上に続く階段の踊り場に着くと腰を下ろした。

さて昼飯を、そう思い弁当を広げた時に仁王がオレを呼んだ。


「べっつにーって、あからさまに機嫌悪いじゃろ」


「んな事ないし」


困ったような呆れたような仁王に不機嫌を隠さず伝える。


「しゃーないのぅ」


「……」


「ブン太、」


「何だよ」


「キスして」


「…は?」


突然何を言い出すのか。
一応言うが、オレ達は付き合っててキスなんか今更照れるもんでもない。
ただ、こうやって仁王が言い出す事は珍しくて。
いつもはオレが言ったり仁王からは額に仕掛けられる感じで。
だからつい考えを巡らせてしまう。


「…早よぅ」


ちょっと拗ねたように言うから可愛くて、結局素直にキスを1つ。


「TricK so Treat」


唇が離れた後に仁王から言われた言葉。

「…お菓子くれたのでイタズラする?」


「反対」


仁王の言いたい事を考える。
こいつは時々とても理屈っぽくてめんどくさい事を言い素直じゃない。


「…もしかして」


そう。
とにかく仁王は素直じゃない。
だからつまり。


「お菓子あげたから、イタズラして?」


照れてそっぽを向いてる仁王の耳に囁けば、耳を赤くして肩を震わせるんだから堪ったもんじゃない。


「ご要望とあらば遠慮なく」


可愛い魔法使いは狼男においしく頂かれるのでした。


なんてな。











おわり

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