どこまでも高く。(PGG ※死ネタ)


「…」

「…」

「まさかなぁ」

「…おん」


空へと伸びた白い煙を見上げる。



「何か、悲しいとか寂しいって思うよりさ、まだ信じられないっつうかさ」

「俺も」



『2人ともまたサボり?』

そう言って、肩にジャージを羽織り笑顔で歩み寄ってくる姿を思い出す。



プロになる為、海外へと挑戦しに行く幸村くんを空港で見送ったのは、つい先日の事だ。
そして、飛行機事故による無言の帰国を果たしたのはその数日後の事だった。





「これからだったのに…残念だよな…」


仁王は返事をしない代わりにいつものようにシャボン玉を飛ばし始めた。


『風かぜ吹くな、シャボン玉とばそ』


「っ…ぅ、」


不意に仁王が嗚咽を漏らし始めた。



背中をさすっている間、仁王は静かに擦れた声で歌を歌い始めて。
それにつられてオレも涙が零れた。
子供の頃に聞いたこの曲はこんなにも悲しい曲だっただろうか。





「…アイツな、俺がシャボン玉吹くと、これ歌いながらつついて割ってたぜよ…」


しばらくして、落ち着いた仁王が鼻を啜りながらポツリと言った。


「…けど、幸村がシャボン玉だったんかのぅ」






『シャボン玉飛んだ
屋根まで飛んだ
屋根まで飛んで
壊れて消えた


シャボン玉消えた
飛ばずに消えた
産まれてすぐに
壊れて消えた


風かぜ吹くな
シャボン玉飛ばそ』







「そろそろ行くか」


「そうやね」



立ち上がった仁王の吹いたシャボン玉が、煙に寄り添うように高く飛んで行くのを見上げた。








おわり





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