※君の速度は

俺の恋人はマイペースなB型男子である。
男同士と言う話はここでは置いておく。

いつだって自由気ままで我儘と言うか自分の感情に忠実だ。








「……ブン太」

「…」

「…そんな後頭部ばっか見なさんな」



部活を終えて帰る準備をしていた。
ダラダラしている内に残るのは俺とブン太だけ。
一緒に帰るのだから構わないが、それより先程から注がれていた視線が気になり口を開いた。




「…お前の髪ってエロいよな」

「………は?」

「いや、何つうかさ。こうやって後ろから見てるとよ、汗ばんでくっつく髪とか揺れる尻尾とか…なあ?こうさ!」

「…意味わからん」

「わかれよ」

「わかりたくないぜよ…」

「わかってんじゃんかよ」

「……」

「つまり、こう」

力説するブン太に嫌な予感がした。
そして後ろから抱きつかれて腰を掴まれた。


「…ムラムラしてくる」

「…やめ、んしゃい」


そのまま身体を密着させると腕を前に回してがっちりと抱き抱えられてしまった。


「お前いっつも制汗剤の甘い香りする」


そのまま項に顔を寄せるとカプリと唇だけで甘噛みをされた。


「ん、くすぐったい、ぜよ…」


「そう?」


「っん、…ちょ、何」


そのままの体勢でロッカーに身体を追い詰められた。


「だから、興奮しちゃったんだって」


そう言って後ろから押しつけられた股間は熱く固くなっている。


「…ッ!」


「なあ、ヤろ?」


耳に囁く言葉に身体が熱くなる。


「や、じゃ…」


「そのわりに固いけどね、ここ」


ロッカーに押しつけていた胸に手を回すと乳首を掠めた。


「ぁんっ、」


必死に声を堪えようとしても、押しつけられているロッカーの扉は熱い息にくもっていく


「しかもおニューだろ?そのパンツ」


タイミングが悪かったのは自分でも認めるが、ブン太に呼び掛けた時の俺は、まだ着替えの途中で短パンを脱ぎワイシャツには袖を通しただけの状態だった。


おろしたばかりの真新しい下着は、先日ブン太と出掛けた時に買った極々普通のトランクスだ。


「偶然、じゃ…」


ブン太に見せる事を意識して穿いてきたわけではない。


「別にいいけどさ」


でも、と言って胸に触れていた指が脇腹を下りてヘソを撫でる。


「、んっ…はぁ」


「グリーンアップルの香りの制汗剤てのは見逃せねえな」


そしてヘソに辿り着いた指が下着を少しずつ下げていく。


「オレに食べてって意味じゃねえの?」


「ちが、っ」


そんなつもりはなかった。
ただ、ブン太からいつも香るその匂いを無意識に選んでしまっただけ。



下着を下げる指はわざと焦らすようにゆっくりゆっくり下げていく。


「ん…引っ掛かるんだけど仁王くん」


もどかしい刺激でも身体は反応していて、俺の性器もすでに熱くなっている。
そしてブン太が笑うように下着のゴムに引っ掛かる位には勃起していた。


「っあ、し、仕方ないじゃろ…」


「じゃあ、ヤろ?」





まったく本当に自分勝手だ。
勝手に盛り上がって勝手に煽って、そして決定は俺に委ねるなんて。


「っも、早よ…触って…」

断る事なんか出来ない俺に満足したのか、ふ、と笑う声がしたかと思えば今度は一気に下着を下ろされた。


「ああ、っん、」









「…髪切ろうかの」

「はぁ?!何でだよ!」


行為が終わって、疲れた身体を起こしてポツリと言うと、ブン太から素早い返答が来た。


「何でって、誰かかさんがこの結んだとこ見ただけで盛るからのぅ」


嫌みを込めて返せばブン太は黙ってしまった。


(短くするんは2年振りじゃ)


毛先を指で弄りながらそう考えていると、不貞腐れたような声が聞こえた。

「…別にいいんじゃねえの」


「…おん」


「切ったとこで仁王に変わりはないし、オレがお前を好きなのも同じだしさ」


確かにそうではあるが、言われた内容が恥ずかしくて顔を逸らした。


「何照れてんだよ。…まあそれに…切ってもすぐ伸びそうじゃん仁王って」


「は?」


何かを含んだ言い方に顔を向けるとブン太はニヤニヤ笑っている。


「だってお前、エロいもん」


そう言って顔を寄せてきた相手に、これは髪を切るだけ無駄だと気付き、腕を伸ばすとキスに応えた

結局のところ、ブン太のペースに流されるのも心地好いのだ。







おわり

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