※君とFever Night〜2012年柳生誕生日〜

「ゴホゴホッ!…ッ…」



仁王くん大丈夫ですか、と柳生の慌てる声がする。

ん、と返事をすれば優しく額に手を当てた。



「やはりまだ熱は高そうですね」

「……すまんの…せっかくの誕生日なんに…」

「いえいえ、気になさらないで下さい」

そう言って微笑んだ柳生に、とても申し訳ない気持ちになる。


「もう一度体温を計りましょうか」

柳生に手渡された体温計を脇に挟み、しばらくじっとする。
ああ、柳生が将来医者になったらこんな風に患者に接するのか、と熱に浮かされながら考えていると体温計が鳴った。


「38度6分…上がってしまいましたね…。薬は……」

「……」

ローテーブルに置かれた処方箋を確認すると、柳生の視線が鋭くなった。


「仁王くん、病院から頂いてるならきちんと服用して下さい」

「…粉薬は苦くて飲めん…」

「仕方がないですね…」


俺の返事を聞くと、柳生は何やらカバンを開けてポーチのような物を取り出した。

「なん、」

「緊急用にいくつか持ち歩いてる物がありまして」

さすが医者の息子、そう関心したのも束の間。


「仁王くん、少々失礼しますね」

その一言と共に掛け布団を取られると体をうつ伏せにされた。


「ちょっ、急になんす…ゴホッげほっ」

「飲み薬がお嫌いなようなのでこれを」

「!?」

文句を言いながら顔を振り向かせれば、白く小さいけれど丸くはなく、少し先の尖った棒状のあの薬を手にしていた。


「……いやじゃ」

「嫌じゃないですよ、治らないですよ?」

「粉薬頑張って飲むけん、それは勘弁してくんしゃい」

「ですが熱も上がってしまいましたし、食後に服用するにも時間が空いてますから」

「…いやいやいや」

「早く治りたいのでしょう」

「……」


どんなに俺が首を振ってもこいつは座薬を使いたいらしい。
どこのヤブ医者じゃ…。


「では、すみませんが四つんばいになって頂けますか」

「…ッ」


いつもなら喜んで自分からする姿勢だが今日はわけが違う。
仕方なくおずおずと腰を上げる。


「仁王くんにも恥じらいがあったのですね」

「…ほっときんしゃい」

しかも俺の心境を知ってなのかそんな事を言う。

「それでは下げますね」

「いちいち言わんでいいから早よ…」

「では」


穿いてるスウェットと下着を膝まで下ろされる。
火照っている体が急に空気に触れて少し震えた。

「…やはり熱いですね」

「っ、冷た」


俺のケツに触れた柳生の手は冷たく感じて思わず体が跳ねる。


「すみません。もうちょっと股を広げて下さい。それから、薬を入れやすくするのでほんの少し我慢して下さいね」

「ん。……っん!ちょ、やぎゅっ」


座薬を入れられる為に下半身を露出し、尻を突き出しているのは正直恥ずかしい。
しかし柳生の言葉に、てっきりぬるま湯に浸けてくるのだと思っていると、とても良く知る感触がそこに触れる。


「仁王くんはこうした方が解しやすいですから」

慣れたようにケツ穴を舐める柳生に頭がクラクラする。

「っあ、アホ!もうやめぇ…」

「ですが痛いのはお嫌いでしょう?」

「…んっ!…お前さんのに比べりゃ…痛く、ない」

「…そうですか。可愛いですね、仁王くん」



舌を抜くと、「入れますね」なんていつもの甘い雰囲気も熱っぽさも何もなく、俺のケツに座薬を入れる柳生。
ああ、こいつが将来医者になったらこんな風に冷静かつ淡々と診察するのだろう。
そんな事を思いながら、いつもと違う小さな異物感を感じたまま俺は熱で朦朧とする意識を失った。







「…柳生のアホ」

「…申し訳ありません」

汗ばんだスウェットを着替えさせていたところ、目を覚ました仁王くんは掛け布団を被り直すと先程の私の行動に文句を言い始めた。

「…普通、風邪で薬っつったら口移しじゃろ」

しかしその声は先程までより落ち着いていて。

「……ああ。その方法もありましたか」

「………。それなんに、ケツ触って煽って生殺しみたいな…」

しかも何やら文句があるのは方法だけではないようで。

言われてみて、着替えさせる最中の彼の下半身を思い出してクスクス笑うと、不機嫌な視線を布団から覗かせた。

「それでは、熱も下がったようなので続きでも始めますか」

「…いちいち言わんでいいっつうに…」

ったく、誕生日おめっとさん、と腕を伸ばして来た仁王くんを抱き締めると布団へと潜り込んだのだった。







おわり

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