家に着くまでが○○です。




あいつの様子がおかしいのは気付いていた。

朝からどことなくボーッとしたり、何だかいつもより顔色が悪く見えたり。


とは言っても、今朝が5時起きの寝不足だと思った。
実際、オレももう無理…眠気が限界。



けどその前に。



「なあ仁王ー」

「……」

「仁王ー?」



窓の外を眺めてるようでまったく返事がない。
無視すんなし!胸中で呟くとカバンから菓子を取り出してシートベルトを外し移動した。


出席番号順に決められたこの座席。
仁王の隣…つまりオレとこいつの間のグラスメイトは、既に他の友人の元へ移動していて空いていた。


「仁王、菓子食う?」

「……ん」

「やっとこっち向いた。菓子食うか?」

「…いや、今…口に入れると…ハプニングが…」

「は?」

「…う゛…ブンちゃん…ちょお、スマン…トイレ…」

「え?何、お前もしかして飛行機酔い?」

「……ピ」
「そんな事なら早く言えよ、アホ。ほら行くぞ」


隣に座って話し掛ければ、仁王は青白い顔で振り向いた。
つうか飛行機酔いしてるなら無理して外眺めなくていいっつうの。

とりあえず、フラフラ歩く仁王をトイレへと連れて行く。


「お前酔い止めは?」

「忘れた…」

「…バカじゃねえの」

「……」

「貰ってきてやるから待ってろよ」

「ブン太…」


トイレまで行くとドア越しに尋ねれば薬は忘れたとか。
まあ朝早かったから仕方ねえとも思うけど。

担任にでも薬を貰って来ようと思ったが名前を呼ばれたから足を止めた。

「何だよ」

「…一緒におって」

「………」

ドアを開けて中を覗けば仁王が涙を浮かべて見つめて来る。

これはつまりそう言う事っつうわけで?


「…っん!ちょっ、何すん…」

「お前せっかくの修学旅行台無しじゃん?」

「…いやいや…って違っ、ッ気分悪いん治るまで…」

「じゃあ気持ち良くなればいいんじゃねえの?」

「……ッ!…ブン太のアホ」


狭い個室の中で何度もキスを繰り返せば、仁王の気分の悪さもなくなって、さあそろそろ…なんて思った矢先に「間もなく着陸の」とシートベルト着用のアナウンスが。


「…帰りの飛行機までお預けだな」

「…帰りは薬飲むから平気なり」

「口移しにしてやるから安心しろぃ」

「……家着くまで勘弁してくんしゃい」







おわり



一応。
仁王くんリバースはしてないです。
…じゃないとブン太がちょっと(^_^;)

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