だいきらい

「俺、仁王の事嫌いなんだ」

そう告げれば、告白してきた当の本人―仁王雅治―は少し表情を曇らせた。

「…嫌いとは随分な言われようじゃ」

「そうだね。でも、うん。ごめん、やっぱり嫌いだ」

「…止めささんでよ」

「だって生殺しもイヤだろう?」

そう言って笑いかければ仁王は視線を逸らした。

「泣かないでよ」

「泣いとらん…」

「そんなに俺の事好きなの?」

「…っ、…」

「ねえ仁王、」

俯く頭を撫でればビクリと震えた肩。
本当に仁王は。

「俺、お前以上に嘘つきだし捻くれてるよ?」

そんな俺でも好きなの?

抱き締めて問い掛ける。

「こんな最低な奴、大嫌いぜよ…」

「うん、俺もこんなに天の邪鬼なやつ可愛くないよ」

「!!」

我ながら、言ってる事とやってる事がちぐはぐ過ぎて笑える。
可愛くない、その一言に赤面した仁王の頬にキスを落とす。

「何でそんなに可愛いの仁王」

「お前さん天の邪鬼過ぎて不安になるぜよ…」

「大丈夫、俺は仁王の事本当に大嫌いだから」

「おん、俺も幸村なんか大嫌いじゃ」

とびきり強がって大嫌いだと告げた仁王が本当に愛しい。

「何だ、思ってる事一緒なんだね」

思わず鼻先にキスをすれば目を見開いて。
おもしろくて見つめていたら不満そうな視線を向けられた。

「何?」

「幸村、」

「だからなぁに?」

「キス、して…」

「したじゃない、頬と鼻に」

「…っ、じゃなくて。口にしてくんしゃい…」

「ふふ、よく出来ました」

「ん、」

瞼を閉じた仁王に、一瞬。
本当に数秒、かすめるだけのキスをした。

「幸村…、」

「どうしたの?」

「…大嫌い…」

「うん、俺も」



ひねくれてて天の邪鬼な俺でも大嫌いだと言った君が、俺も大嫌いだよ。








おわり

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