王子様のエスコートにより華麗にダンスを楽しむニオウでしたが、ふと時計が目に入りました。
時刻は間もなく12時を差そうとしておりました。


『鐘が鳴ると魔法が解ける』

ジャッカルの言葉が頭を過ります。



(ここで解けたら王子様に嫌われ、みんなに笑われてしまう…)


ニオウは足を止めると王子様を見つめます。


「すまん、もう帰らないかんのじゃ…」

「えっ?!」


そうして驚く王子様の手を振りほどくと慌てて階段を駆け降りたのです。


「あっ!」


しかし途中で履いていた靴が片方脱げてしまいました。
時計の鐘は鳴り響きます。


ニオウは引き返す事はなく、そのままお城を後にしたのでした。








「はぁ、やっぱ旨かったなぁお城の料理!誰かさんが作るのとは大違いだぜ」






今日もブン太はニオウの料理を見てはパーティーの余韻を語ります。

「しっかし、あの人もひどいっすね〜途中で帰っちゃうなんて」


アカヤの言葉に王子様の哀しそうに驚いた顔が過りました。

「あなた達もあの方のような上品さを見習ったらいかがですか」


ヒロシの小言には二人ともブーイングです。





コンコンコン

その時玄関のドアがノックされました。

ニオウが開けるとそこには


「お城から王子の遣いでこの靴を忘れた女を探している」


王子様の家来のサナダでした。
話を聞くと、招待客を一件一件訪ね回っているそうでした。


「二人とも、あの靴が履ければ王子様の妻になれますよ」


ヒロシは諦めた妃の母と言う立場に眼鏡の奥の瞳が光りました。



「まずはオレからかな」


意気揚々とブン太が靴に足を通します。

「…きっつ、何だよこれ」

が、ブン太には小さくて合いませんでした。

「次は俺っすね〜」

そして続いてアカヤも足を通します。

「でっか…ブカブカして歩けないっす」


「私達の家ではないようです…残念ですが、ア」
「そこの女はどうだ」


ヒロシの言葉を遮り、サナダが指名したのはニオウでした。


「いやいや、あいつは昨夜のパーティーには行ってないぜ」

「王子の命では招待客の家の未婚女性はみな対象者だ」


有無を言わせないサナダに、ニオウは怖ず怖ずと足を靴に伸ばしました。


すると小さくもなく大きくもなく、ニオウの足のサイズにピッタリだったのです。


「どうしてあなたが」


ヒロシは信じられないと言うように声を震わせます。

「それは俺が答えよう」


するとどこからともなくヤナギが現れました。
そしてニオウを昨夜と同じ姿に変えると得意気に笑いました。


「ニオウこそが妃だ」


その言葉にヒロシもブン太もアカヤもひれ伏す事しか出来なかったそうです。







「王子様、家事出来んけど本当に俺が妃でええんか?」


無事再会を果たした王子様とニオウ。
照れたように問い掛けるニオウにセイイチ王子は笑います。

「心配いらないよ。お城ではメイド達が食事も掃除もしてくれるからね」


その言葉にようやくニオウも安心すると王子様の頬にキスをしたのでした。







おわり





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