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その頃お城では―――
「ブン太さん、何か肉少なくないっすか」
「だな…まあケーキあるからいいけどよ〜」
「二人ともご覧なさい、あちらが王子様ですよ」
ブン太とアカヤは食べる事に夢中で王子様に見向きもしません。
ヒロシは呆れながら眼鏡を正すとため息を吐いたのでした。
「よし、城に着いたぞ」
ニオウとジャッカルもようやくお城に辿り着きました。
「まだ焼肉はあるじゃろか…」
ニオウの腹の虫が再び鳴りました。
「心配するな、俺が今運んできた分がここにあるぜ」
頼もしく笑ったジャッカルにニオウも安心してお城に足を踏み入れようとしました。
「あ!そうだニオウ!魔法は12時の鐘が鳴り終わると解けちまうらしいんだ。だからそれまでには帰れよ!」
呼び止めたジャッカルの言葉にニオウは頷くといざパーティーへと向かいました。
「おお〜っ」
匂いに惹かれるがまま扉を開けるとそこでは大勢の人達がダンスをしていました。
しかしニオウのあまりの美しさに見惚れて足を止めると道を開けたのでした。
「おや、随分と上品なお嬢さんがいらっしゃいましたね」
ヒロシ達三人もその姿に目を止めましたか、もちろんニオウだとは気付きません。
「焼肉食べたいんじゃけど…ここのテーブル、おじゃましてええかのぅ?」
気分を良くしたニオウが微笑みかけると、皆が取り皿に肉を分け与えたのでした。
「あの子、随分いい食べっぷりをしているね」
王子様が家来に話し掛けました。
「しかし、遅刻をしてくるとはたとんどる!」
「相変わらずだなサナダは…」
王子様は椅子から立ち上がると、肉を幸せそうに頬張るニオウの元へ向かいました。
「こんばんは、初めまして。君はとても素敵な食べっぷりをしているね」
「…おんばんは、ほうかのぅ」
「おもしろい子だ。俺と踊ってくれないか」
肉を食べたまま会話をしているニオウに笑いかけると、王子様はニオウをダンスに誘いました。
王子様がダンスをすると言う事はプロポーズと同じ意味に値します。
ニオウは驚いたまま王子様を見つめていると手を引かれました。
「ダンス、苦手なんじゃ…」
「大丈夫、俺がエスコートするから」
そうして、ニオウが王子様とダンスを始めると会場の中は一斉に拍手で包まれました。
「なあ、これ残りの食ってもいいかな」
「いいんじゃないっすかー。俺にも分けてくださいね」
相変わらず食べてばかりいるブン太とアカヤに、ヒロシは紅茶を自棄のみしたのでした。
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