5(おまけ)

今年も恒例の演劇が終わり、部室で反省会と言う名の打ち上げが行われていた。



「…あのー、幸村部長?俺の役、設定ひどくないっスか」

今回主役を演じた赤也が口を開いた。

「いやー、みんなをそれぞれ当て書きにしたらこうなったんだ」

作・演出をした幸村は今回も楽しそうに笑う。

そんな中、何やら深刻な顔をしている奴がいた。

「……」

「どうしたんだよ、ジャッカル」

「……ブン太、俺今回喜んでいいよな?」

「まあ、タイトルだしナレーションしてたし、すげえメインなんじゃん?」

「だよな!最初は、木の役で切り倒されるからどうなるかと思ったぜ」

そう、今まで脇役にしかならなかったジャッカルも、実は主役を狙っていた。

そしてもう1人、見るからに落ち込んでいる奴が。

「……」

「柳生は何いじけとるん?」

「…1フレーズしか歌えませんでした」

「…ああ」

竪琴役に選ばれ、自分の美声を披露出来ると意気込んでいた柳生。
しかし演出と時間の都合上仕方なく歌う時間が短くなってしまったのだった。


「ところで仁王、オレに内緒で赤也連れ込んでたのかよ?」


「わっ、ブン太、突然なん、」

ブン太に後ろから抱きつかれて慌てる仁王。

「だーかーらー、俺のいない間に赤也と何してたんだよ」

「…飯食っただけなり」

抱きついたまま耳元に囁くブン太に、ますます仁王は慌てる。

「ふーん?そのわりにこいつの事匿ってたじゃん」

「まさに浮気の現場と言った様相だな」

「…参謀はヘンなとこで口挟むなや!」

今にも修羅場または濡れ場に傾れ込まれそうな雰囲気を遮った柳に仁王はホッとしていた。

「なあ、ところで今回も真田が静かじゃねえか?」

ジャッカルの言葉に、みんなの視線が一斉に真田に向いた。

「真田副部長〜?」

赤也が様子を覗きこむと途端に慌てる真田。

「……せ」

「ん?」

そして静かに発せられた言葉に耳を傾ける。

「…せ、接吻を…交わしてないぞ」

赤面しながらそう言った真田に一同唖然。

「ああ、あの姫と赤也の結婚の件か。本当にさせるわけないだろう?第一、相手が俺ならともかく真田だなんて赤也が気の毒だよ」

しかし真田の言いたい事を汲んだ幸村の返事に、赤也はますますポカンとしていた。

「へ?」

「そうなのか」

「そうだろう、赤也」

「…え、いや…えっと…」

そして笑顔の幸村と落ち込む真田を前に返答に困っていると「なるほど、」と何やら意味深な柳の声。

「や、柳先輩?」

「ふむ、いいデータが取れた」

「え?」

怪しく微笑む柳が答えるわけはなく。
こうして今年の文化祭も過ぎたのだった。






「なあ幸村くん、来年も仁王との絡みシクヨロ」

「えー、俺も仁王の相手役やりたいな」

「そんな事を言うなら私だって」

「……勝手に揉めるなや」






おわり

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