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「おや、かわいい女の子が1人でどこ行くぜよ」
赤ずきんがガムを膨らませながら森を歩いていると、後ろから突然声をかけられました。
“女の子”に間違われる事は少なくありませんが、だからこそムカついた赤ずきんは無視して歩き続けます。
「あっ、コラ待ちんしゃい!」
肩を掴まれ振り向くと、オオカミ仁王でした。
「っ、何だよ!つか、オレ男だから!ナンパなら余所でやれよ」
「……あー、すまんすまん」
「で?何か用?オレ急ぐんだけど」
いつまでも手を退かさない仁王に強気に話します。
「いや、だから…いい匂いさせてどこ行くん?ピクニックなら一緒しちゃるよ」
「……え、…ばあちゃんのお見舞いに」
オオカミは、いかにも胡散臭そうなのに、うっかり口が滑ってしまいました。
「へー、エライな。お見舞いなら、ここらで花でも摘んで行くといいぜよ」
「花ねぇ………」
「おばあさんは大変喜ぶと思うぞ。花好きの母親からとでも言えば『幸村くんから頂けるとは光栄です』と喜ぶだろう」
乗り気でない赤ずきんに静かな声が聞こえ、チラッと足元に目を向けると花の柳でした。
「…そうだな、「『ところてんだけじゃ淋しいしな』」…とお前は言う」
柳の言葉には驚きましたが、赤ずきんはその通りだったので、納得すると早速近くの花畑で摘み始めました。
――――後ろでオオカミが妖しげに微笑んだのも気付かずに
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