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あるところに、寝坊癖とサボり癖のある赤也と言う少年が、母親の精市と二人で住んでいました。
二人は毎朝、牛の乳を搾ってそれを売って暮らしていました。
ところがある日、牛が乳を出さなくなってしまいました。
「げっ!明日からどうすんだよ〜…」
「仕方がない。雌牛を売って種を買おう。赤也、街まで行って来てくれるね?」
ガーデニングの好きな精市母さんはとてもポジティブです。
「めんどくせえなー」
「…苦労かかるよ?」
黒い微笑みを浮かべた母親に頼まれ、赤也は仕方なく牛を連れて出かけました。
街に向かう途中、怪し気に佇む商人の蓮ニに呼び止められました。
「やあ赤也。乳を出さなくなったその牛を売りに行くところだろう。ならば、その牛とこの豆を取り替えてくれないか」
「えぇっ、豆一粒とっスか?」
「これは輸入業をしているジャッカルから譲って貰ったんだが、俺のデータによれば、この豆は大変珍しく、地面に蒔いて一晩経つと、天まで届くほど高く伸びると言う」
「えっ、マジ?それは不思議な豆だぜ。取り替えっこしましょう」
「(怒った母親に庭に蒔き捨てられる確率100%…。しかし結果的に発芽し、天まで伸びるのか楽しみだな)」
蓮ニがそんな事を考えているとも知らず、赤也は大喜びで家に帰り、精市母さんに訳を話しました。
「お前は何てバカなんだ。こんな豆と牛を取り替えるなんて」
精市母さんは怒って豆を庭に捨ててしまいました。
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