太陽は月に恋をしてA・完

部活も終わり、ふと気付くとブン太がいなかった。
テスト期間中の、海岸でのキスを幸村達に目撃されてしまっていたらしい。
その事を話さなくては…。


ただでさえ男女交際をたるんどる、と一蹴する真田には、男同士で、しかもよく知る部活仲間2人のキス現場は受け入れられなかったようだ。

そして同じく幸村と柳も、目が合えばどう接するべきか困ったような表情で、それでも尋ねられるから答えていたが、結局拒絶するわりにからかわれたため、最後に「俺はブン太だけが好きなんじゃ!」と答えれば、やはり否定された。
挙げ句、なぜか切原を含めた元レギュラー達全員と試合をさせられヘトヘトだ。


しかし仲間にバレてしまっては、どう思われようと開き直る覚悟が出来た。


先に帰ったか?と思い見回すと荷物はある。
携帯を開くと、一通のメール。

…イヤな、予感がした。











雅治。
呼ぶには恥ずいから、文字にした。

いつも、サンキュ。

雅治といると、すごく安心する。
時々不安が押し寄せて来たり、すげーヤな事があっても、お前の顔見れば、そんなの忘れられた。

オレ前に、太陽目指すひまわりが好きっつったけど、オレの事太陽みたいだって言われたの、ホントは嬉しかった。
だけどお前と過ごす内に、夜もいいなと思ったんだ。
夜の暗さは、オレとお前を隠してくれた。
だから、誰もオレ達の事何も言わないし、知らない。現実を忘れて、お前と甘い夢が見れたから。
夜が明けてしまうのが怖いと思った。
それに、雅治って月みたいじゃん。
どこか儚げで、ちょっと謎っぽくて、そのキラキラ輝くキレイな銀髪も。


だからオレ、誰からも何も言われないで、堂々と月の傍にいられる星が、羨ましかった。
星に、なりたいと思った。


ごめんな、雅治。
お前を好きになった事後悔なんかしないよ。
愛せた事、愛されてた事、マジ幸せだった。
だけど、オレは












携帯を握る手が震える。
赤いストラップの紐が切れて落ちた。


メールの内容が理解出来ず、「…ブン太…?」と呟くのが精一杯で。


俺の様子に気付いた幸村が「愛しの彼女がどうかしたの?」とからかいながら携帯を覗き込む。
そして表情が引きつり、青ざめたかと思うと、小さな悲鳴をあげ泣き崩れた。


着替えも途中で、荷物も置いたまま俺は走り出していた。
何度も、何度も、何度も…ブン太の名前を呼びながら。





しかし、俺を照らす太陽が戻ってくる事は二度となかった。











大人になった今なら、あの頃は思春期の興味と些細な嫌悪だったんだと思える。


それでも、あの日幸村達から問われた時はブン太となら仲間にどう思われようと乗り越えて行けると思っていた。
そして更には俺がブン太を守って行こうと。





だけどあの日、突然太陽が沈んだ俺は、いつまでも明けない夜の中。
月の隣で輝く小さな君は、誰よりも遠くに行ってしまった。
俺が風になれるなら、君の傍まで行けるだろうか…。




ブン太は俺にとって、太陽だった。
ブン太に与えられたぬくもりも、2人で過ごした時間も、今までもそしてこれからも決して忘れない。
思い出の数だけ強くなれる、泣いた分だけ笑えるようになる、なんて言葉もあるけど、俺はブン太が好きだと言ってくれた笑い方さえ思い出せない。



だけど君が星を望んだのなら、俺はいつまでも、君の隣で輝く月でいよう―――




「ブン太、愛してるよ…」


今日も1人夜空を見上げ、輝く星に呟いた。













ひまわりが好きだと笑った彼は太陽みたいな存在だった。
そしてそんな太陽は月のような彼に恋をして、2人想いが通じ合い、いつしか太陽は夜を求め、星に憧れた。


太陽みたいな彼は、月のような彼が大好きで、だからこそ1人雲に覆われ、もっと月に近づきたくて星になる事を選んでしまった。



月のような彼は、星になってしまった太陽が大好きだった。
そして今でも夜空を見上げ、星に想いを願う姿は、まるで太陽を見つめ続けるひまわりの花のように。


太陽みたいな彼が好きだと笑った花のように。









おわり

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