スノーハンター

「ぅわぁ〜…!」

寒さで鼻がツンとする。
目の前もたった今自分が吐き出した息で白くなる。

しかし、感嘆の声が漏らすには充分だった。




「スッゲー雪…!」


この週末、天気予報では日本中に大雪予報が出されていた。
それでも昨夜眠る時には全くそんな気配もなかったのだが、朝起きてみれば辺り一面が真っ白な雪景色と化していた。



弟達ははしゃぎながら庭に出れば早速雪遊びを始めている。
普段あまり積もる地域ではない為、こんな雪景色を見たのは自分も初めてではないだろうか。



「あ、」


ふと頭を過った人物。
あいつはこんな景色見たら家は愚かまず布団から出ないだろう。



それでも会いたくなって電話をかけた。




意外にも仁王は快諾すると、昼には待ち合わせる事になった。


会った仁王は、ニット帽にイヤーマフ、ダウンジャケットにゴツい手袋…等々見るからにまさに完全防寒といった姿をしていて笑ってしまった。


「珍しいじゃん、仁王が部屋から出るなんて」


「…こんだけ積もりゃ俺もテンション上がるわ」


昼飯を食べようと入ったファミレスはガラガラしていた。
上着を脱いだ仁王はタートルネックにフリースまで着ていてオレから見ればちょっと厚着し過ぎな気もする。


「で、どしたん?わざわざこんな雪ん中呼び出して」


「あー…いや、特に用はねえんだけどさ」


「……」

寒い中呼び出したのをやはり少し怒っているのかオレの返事に顔をしかめた。


本当は真っ白な雪を見たら仁王に会いたくなったなんて恥ずかしくて言えるわけがない。


「…てっきり、一面銀世界で俺の事思い出したんかと期待したんやけどな」


「え…」


「俺の髪色一色」


仁王が外に視線を向けたからオレも視線を移す。
外は変わらず雪が降り続いている。


「俺は暑い夏や赤い物見るとブン太に会いたくなる」


そう言ってこちらを見た仁王はニッと笑っていた。


「…う、自惚れてろよアホ」


何でもお見通しなのかコイツには。




食後のデザートまで食べるとファミレスを後にした。



「…さっっぶ」


外はそりゃもう極寒で。
明日の朝方まで降ると言う予報だけあって、朝より荒れに荒れていた。


「…ここは神奈川の景色じゃないぜよ」


吹雪く中、必死に傘を握って駅まで歩く。
すれ違う人なんて全くいない。


仁王の世界に入り込んだみたいな、そんな…。


「なんつうか、雪女とかそんな世界みたいだな…」


「ん?」


「真っ白な銀世界に、銀髪の仁王がいて、仁王が作り出した世界にオレが迷い込んだような…」


「じゃあお望み通り…」


「わっ…!?」


「俺の世界に閉じ込めたるよ」


突然仁王に抱き締められて思わず傘を落とす。
雪と共に舞い飛んで行くオレの傘。


「あ、傘が」


「捕まえた」


オレの言葉なんか無視してギュッと回された腕が心地好くて。
仁王に告白された日を思い出して胸がキュッとする。


「捕まってやったんだよ」


顔をうずめて抱き締め返せば額にキスをされた。







おわり





突発。
吹雪いてますねえ雪…。




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