※祭りの影

「仁王…」


悔しそうな店主から景品を貰いさあ次に、そう思ったところでブン太に袖を引かれた。


「ん?」


「ちょっと」


隣を見ると口籠もりながら答えたので、とりあえず付いていく。


「ブンちゃんどうしたん?下駄壊れた?」


境内の裏まで来ると、先程の祭りの賑やかが遠くで聞こえる。
辺りもほのかな提灯の明るさしかなく、暗い。


「ブン太?」


立ち止まったまま何も言わない相手を覗き込みながら名前を呼んだ。


「っん、ぅ」


しかしその途端、抱きつかれるとキスをされて、咄嗟の事に身体のバランスを崩し、貰ったばかりのゲーム機を落としそうになった。


驚いて相手を見れば、ブン太が一度身体を離した。


再びすぐに口は塞がれた。


キスを繰り返されている内に、首に腕を回し、顔を引き寄せられるとブン太が俺の唇を吸った。


これはそういう事なのだろう。


そう自分の中で理解すると、足元に荷物を置いてブン太の身体を強く抱き締める。



「…ふ、っん」


何度もキスを繰り返すそば次第にブン太の腕の力が抜けていく。


身体を支えながら着ていた甚平の襟元から手を入れると、結んでいた紐は簡単にスルリと解けた。


「っあ、ぁ」


露になった胸に手を這わせて乳首を弄ればブン太が驚きと共に可愛い声を漏らした。


「ブンちゃん甘い、さっき食べてた綿菓子の味がする」


首筋を舐めながらそう笑うと俺の服を掴む力が強くなる。


「…どうして欲しいん?」


わかっていて言わせたいのだが、素直に言わない事も理解している。


胸への刺激だけを繰り返していると、その手を掴まれてそのまま中心へと運ばれた。


「っぁ、ちょっ」


しかしそれは目の前の相手ではなく、俺自身の中心であった為、予想しなかった刺激に一瞬身体が跳ねた。


「仁王の…舐めたい…」


しかも火照った顔に潤んだ瞳でそんな事を言われて反応しないわけもなく。


「なあ…」


「…っ、」


そのまま今度は脇腹や腰、ヘソの辺りを撫でる手に、ゾワゾワと快感を感じて息を吐いた。


「…仕方ないのぅ」


平静を装いつつ承諾するとブン太の口角が上がった。


「撫でただけでこんなにしといてよく言うぜ」


反論する前にズボンと共に下着も下ろされて、すでに反応していたそれがしゃがみこんだブン太の目の前に露になった。


「ッ…」


上半身をはだけさせたブン太が、下半身を露出した俺のそこを口に含んでいる。


そんな光景、誰かに見られでもしたら男同士である事は一目瞭然だ。


しかしそう思う程に気持ち良さが増す。


「…なんつうか、お前ってマゾだよな」


「はっ、なん…」


思考を遮るブン太の言葉に視線を下ろすと、指の動きをそのままにこちらを見上げて笑っている。


「誰かに見られたいんだろぃ?こうやって舐められてるとこ?さっきからすげえ濡れて来てる」


「っん」


言いながら先端を吸われて身体が震える。


「…幸村くん呼ぶ?」


「あ、っほ!」


「あ、でもおっきくなった」


「…」


幸村に見られたいなんて事は当然ないが、こんなに乱れているブン太を知っているのは俺だけだと思うと堪らなかった。


「…、ブン太」


「ん?」


そろそろ限界も近くなり名前を呼ぶと、先端をくわえたままこちらを見る。

その瞳と赤く染まった頬に、ブン太の身体を引き離すと向きを反転させた。


「あっ、ちょ…」


その行為に不満を漏らしながらも、柱に掴まらせると尻を突き出させた。


「っはあ…」


そしてズボンの上からそこに指を添えただけでブン太も熱い息を吐く。


ズボンと下着を膝まで脱がせると指を入れる。


「…ブン太もやらしいのぅ…もうぐちょぐちょしとる」


最初から指をすんなり受け入れたそこはとても濡れていて柔らかい。


「っあ、はぁ」


「そんなに声出すと気付かれてまうよ?」


指を増やす度にブン太は嬌声を漏らし、その一言で更にきつくなった事に笑いが零れる。


「…赤也あたりならその辺で屋台見てるかもな」


「や、ぁ」


ブン太こそマゾなんじゃないだろうか。


より締まる穴に苦笑しながら、解れたそこから指を抜くとブン太は切なそうに振り返る。


「…ブン太」


そして先端をあてがってゆるゆると腰を動かす


「あ、っ早く…」


焦れったそうに自ら入口を広げて見せるものだから、俺ももう我慢の限界を迎えた。


「っあん、あ、ぁ」


一気に突き入れるとブン太が背中を仰け反らす。


「ん、いつもより、締まる…」


「は、っあ、…」


境内では祭りの賑やかな音や行き来する客達の明るい声が聞こえる。


そんな表とは対称的に、俺達は闇に潜んで身体を重ねる。


なんて不健康且つ非道徳的なんだろう。


そう思う反面、目の前で淫らに腰を揺らすブン太が可愛くて愛しい。


「っん、あぁ…ん」


「そういや、」


「え」


「いや、後でええよ」


言い掛けた言葉を飲み込むと、ブン太の腰を掴み律動を早くする。


そして2人して限界を迎えるとその身体を抱き締めた。













「で?」


「ん?」


「さっき言い掛けたの何?」


祭りの賑やかさを遠くに聞きながら帰る。
途中思い出したようにブン太が口を開いた。


「ああ。…珍しくブン太から誘ったからどうしたんかなぁって」


「……お前が」


顔を逸らしたブン太が口籠もりながら話す。


「お前が射的してた時に、近くにいた女達がお前の事カッコイイって騒いでておもしろくなかったんだよ…」


勿論俺にもその歓声が聞こえていなかったわけじゃない。
でもまさかブン太がそんな事を思っていたとは。


「かわええのぅブン太は」


「バカにしてんだろ」


「んなわけないじゃろ」


腕の中に抱き寄せると再び俯いた。


「けど、あんなかわええブン太、誰にも見られたくないけんのぅ…外ではもうやらん」


耳に囁くと肩が震える。


「オレだって、仁王のあんなエロい顔誰にも見せたくねえし」


「ブン太の方がやらしい顔しとるよ?」


パッと顔を上げて頬を赤らめる。


「してねえっつうの!」


「それに誘ったんはブン太やし」


「うっせ…大体乗ってきたの仁王じゃん」


「んー?今日は後ろからだから乗ってないぜよ」


「……もういい」


とぼけながら返せば呆れてしまったブン太が腕を抜け出て行く。


慌てて追い掛ければ、下駄の音が響いた。







おわり


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